政府税制調査会答申(令和元年)「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制のあり方」
安倍首相からの諮問と答申
令和元年9月26日に第28回税制調査会が開催され、答申「経済社会の構造変化を踏まえた 令和時代の税制のあり方」がとりまとめられました(内閣府サイト諮問・答申・報告書等「経済社会の構造変化を踏まえた 令和時代の税制のあり方」参照)。これは平成25年6月の安倍首相からの諮問を受けて、中長期的視点からあるべき税制のあり方についての考え方を提示するものです。
確定拠出年金(DC)・確定給付企業年金(DB)関連答申
公的年金等控除から人的控除へ
働き方やライフコースの多様化により、所得の種類ごとの負担調整よりも、人的な事情に応じた負担調整(人的控除)の重要性が高まっているとの考えの下、これまでも給与所得控除や公的年金等控除の一部を基礎控除に振り替える見直しが行われてきました(「令和2年以降の給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除等に係る改正」参照)。しかし海外ではそもそも私的年金に特別な控除を認めていないとの報告も専門家会合でなされており(「税制調査会「老後の資産形成に関する専門家会合」の開催」参照)、今後は更に公的年金等控除を人的控除に振り替えることが検討課題とされています。
各種私的年金に共通の非課税拠出限度額(「穴埋め型」制度)
就労状況(就労先)によって企業年金の有無や種類や厚みは異なりますが、イギリスやカナダではそれによって有利・不利が生じないように各種私的年金に共通の非課税拠出限度額を設けています(「税制調査会「老後の資産形成に関する専門家会合」の開催」参照)。日本では現在制度毎に拠出限度額が設けられているものの、他制度との調整が十分行われていないことにより有利・不利が生じています。これを解消するために、共通の非課税拠出限度額のうち企業型DCやDBで拠出しなかった額をiDeCoで拠出できるようにする「穴埋め型」の制度(「穴埋め型(全国民共通の非課税貯蓄枠)の引退後所得保障制度」参照)が提案されていましたが、これが反映されました。
受給方法(年金・一時金)や転職有無に中立的な税制
退職給付が一時金払いか年金払いかによる有利不利や、同一企業に20年以上勤続したか否かによる退職所得控除の有利不利(注)が生じている点の見直しも検討課題とされています。
(注)これに関する連合の提案は「確定拠出年金関係団体の令和2年度税制改正要望等」参照。
また給与への課税とのバランスについても丁寧な検討が必要とされています。
金融商品関連税制
この他、勤労者財産形成年金貯蓄やNISAとの税制上の取扱いの差異についても、その是非が検討されるものと思われますが、簡素で分かりやすい制度とすることも重視されます。また金融所得への課税についても総合的に検討される見込みです。
相続税
少子化により一人当たり相続額の増加が進むと見込まれることから、資産課税が適切な再分配機能を果たすよう検討される見込みです。 相続税と生前贈与への課税のあり方についても検討される見込みです。