令和2年以降の給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除等に係る改正

扶養親族等申告書非提出者への源泉徴収税額のペナルティ廃止

日本年金機構は令和元年9月18日に公的年金の源泉徴収対象者に令和2年分の「扶養親族等申告書」の送付を開始しました日本年金機構サイト「『令和2年分公的年金等の受給者の扶養親族等申告書』の送付」参照)

これまでの源泉徴収税額算出上は、これを提出しないと高い税率(10%)が適用されましたが、令和元年度(平成31年度)の税制改正により令和2年以降は申告書提出者と同じ税率(5%)が適用されます財務省サイト「令和元年度税制改正の解説『所得税法等の改正』」参照)。控除額についても見直されたため、多くの人は扶養親族等申告書を提出する必要がなくなりました。ただし受給者本人が障害者・寡婦(寡夫)等に該当する場合や、控除対象となる配偶者または扶養親族がいる場合は、申告書の提出により源泉徴収税額が抑えられます。

なお、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)や確定給付企業年金(DB)等から受給する年金についてはこの申告書は提出できず、引き続き7.5%の所得税(控除額25%及び税率10%に基づく)及び復興特別所得税が源泉徴収されます。

令和2年以降の給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の改正内容(平成30年度税制改正)

国税庁サイト「平成31年(2019年)版 源泉徴収のあらまし『税制改正等の内容』」参照。

給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替(10万円)

給与所得控除額が一律10万円引き下げられました。また公的年金等控除額も一律10万円引き下げられました。なお給与所得控除と公的年金等控除の重複者については合計で20万円の引き下げとならないよう、後述の調整(片方の控除額のみの減額)が行われます。
一方で、どのような所得にでも適用される基礎控除額は10万円引き上げられました。

給与所得控除額・公的年金等控除額・基礎控除額の上限引下げ

給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額が850万円、その上限額が195万円にそれぞれ引き下げられました。 
公的年金等の収入金額が1千万円を超える場合の公的年金等控除額について、195万5千円が上限とされました。また公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1千万円を超え2千万円以下である場合には一律10万円、2千万円を超える場合 には一律20万円が見直し後の公的年金等控除額から引き下げられました。 
基礎控除については合計所得金額が2400万円を超えると控除額が逓減し、合計所得金額が2500万円を超えると基礎控除の適用はできません。

所得金額調整控除の創設

その年の給与等の収入金額が850万円を超える場合で、年齢23歳未満の扶養親族や特別障害者である扶養親族等がいる場合の総所得金額を計算する場合には、給与等の収入金額(上限1千万円)から850万円を控除した金額の10%に相当する金額を給与所得の金額から控除することとされました。これにより子育て世帯等は負担増を回避できます。
また給与所得と年金所得の双方を有する方の負担増を抑えるため、該当する場合は片方に係る控除のみが減額されます。

各種所得控除等を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の見直し

同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件が48万円以下、源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件が95万円以下、配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額要件が48万円超133 万円以下、勤労学生の合計所得金額要件が75万円以下とそれぞれ10万円引き上げられました。

公的年金等に係る雑所得の速算表

(以上の内容を反映した、公的年金等に係る雑所得の速算表は、国税庁サイトタックスアンサー「No.1600 公的年金等の課税関係参照。)