令和6年度与党税制改正大綱におけるiDeCo改革案
自由民主党・公明党「令和6年度税制改正大綱」(2024年度税制改正大綱)
令和5年12月14日に与党(自由民主党・公明党)は「令和6年度税制改正大綱」を公表しました(自民党サイト「令和6年度税制改正大綱」参照)。
今回の大綱では、iDeCoについては前年度と同様の記載がなされています。
具体的には、令和4年11月28日に新しい資本主義実現会議が決定した「資産所得倍増プラン」(「資産所得倍増プランにおけるiDeCo改革案」参照)の第2の柱のうち、次の2つが反映されました。
・iDeCoの拠出限度額の引上げ
※ 2024年の公的年金の財政検証に併せて結論を得る
また、私的年金等に関する公平な税制の在り方として、前年度に引き続き、次の指摘がなされていることが記載されました。
・退職所得課税については、勤続年数が20年を超えると一年あたりの控除額が増加する仕組みが転職などの増加に対応していない
iDeCo改革案(前年度と同様)
具体的な記載内容(抜粋)
具体的な記載内容(抜粋)は以下のとおりです。
私的年金や退職給付のあり方は、個人の生活設計にも密接に関係することなどを十分に踏まえながら、拠出・運用・給付の各段階を通じた適正かつ公平な税負担を確保できる包括的な見直しが求められる。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能年齢の 70 歳への引上げや拠出限度額の引上げについて、令和6年の公的年金の財政検証にあわせて、所要の法制上の措置を講じることや結論を得るとされていることも踏まえつつ、老後に係る税制について、例えば各種私的年金の共通の非課税拠出枠や従業員それぞれに私的年金等を管理する個人退職年金勘定を設けるといった議論も参考にしながら、あるべき方向性や全体像の共有を深めながら、具体的な案の検討を進めていく。
iDeCoの加入可能年齢を70歳に引き上げ
iDeCoの加入可能年齢(現行)
現在iDeCoには原則として次の年齢まで加入できます。
国民年金第1号被保険者 | 60歳 (国民年金の被保険者としての上限年齢) | |
国民年金第2号被保険者 | 65歳 (国民年金の被保険者としての上限年齢) |
iDeCoの加入可能年齢を70歳まで引き上げる場合の論点
iDeCoの加入可能年齢を70歳まで引き上げる場合、次のような論点があります。
② 国民年金の被保険者としての上限年齢と連動するのか
③ ②で連動しない場合、どのような条件を満たした者が対象か
これについては未だ明確ではないものの、第19回企業年金個人年金部会で企業年金・個人年金課長から次のような考えが示されています。
・例えば一定期間公的年金に加入していることを要件にする等
・技術的・実務的な検討が必要(全く無理ということではない)
iDeCoの拠出限度額の引き上げ
iDeCoの拠出限度額(現行:2024年12月以降)
現在のiDeCoの拠出限度額は次のとおりです。
国民年金第1号被保険者・ | 6.8万円 (国民年金基金等との合計) | |
国民年金 | 企業型DCとDB等 | 次のいずれか低い額 ・2万円 ・5.5万円ー他制度掛金相当額ーDC事業主掛金 |
企業型DCのみ加入 | 次のいずれか低い額 ・2万円 ・5.5万円ーDC事業主掛金 | |
DB等のみ加入 | 次のいずれか低い額 ・2万円 ・5.5万円ー他制度掛金相当額 | |
企業型DC・ | 2.3万円 | |
国民年金 | 2.3万円 |
iDeCoの拠出限度額を引き上げる場合の論点
iDeCoの拠出限度額を引き上げる場合、次のような論点ががあります。
②企業型DCの拠出限度額は引き上げるのか
今回の税制改正大綱にはこれらについての言及がありません。
仮にこれらの引き上げを行わない場合、iDeCoの拠出限度額の引き上げは「6.8万円」「5.5万円」ではなく、「2.3万円」「2万円」がその候補と予想されます。
「2万円」を「2.3万円」に引き上げることについては令和4年11月の「規制改革・行政改革ホットライン(縦割り110番)」の回答でも「検討を予定」とされています(「「規制改革・行政改革ホットライン(縦割り110番)」(確定拠出年金関連)に対する厚労省の回答(令和2~3年度)」参照)。
iDeCoの中小事業主掛金
iDeCoの中小事業主掛金を拠出できる企業は、現在は企業型DCやDB等を実施していない事業主のうち、厚生年金被保険者が「300人以下」の事業主とされています。この人数要件の緩和は令和2年に公布された年金制度改正法の附則にも検討事項として規定されています。人数要件の緩和は厳密には拠出限度額の引き上げではありませんが、iDeCoに事業主が拠出できる額を引き上げる改正です。
私的年金等に関する公平な税制のあり方
具体的な記載内容(抜粋)
具体的な記載内容(抜粋)は以下のとおりです。前年度とほぼ同じ記載(青色部分は今年度挿入)であり、今回も具体化には至っていません。
また、多様で柔軟な働き方が一層拡大する中、働き方に中立的な税制を構築していくことが重要であるが、退職所得課税については、勤続年数が20年を超えると一年あたりの控除額が増加する仕組みが転職などの増加に対応していないといった指摘もある。
年金課税に係る検討事項
具体的な記載内容は以下のとおりです(前年度と同じ)。