退職給付会計上の「確定拠出制度」と「確定給付制度」の会計処理
退職給付会計上の「確定拠出制度」と「確定給付制度」
一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に支給される給付を会計上「退職給付」といい、その会計処理は企業会計基準委員会「企業会計基準第26号 退職給付に関する会計基準」に従います。
退職給付制度は会計上「確定拠出制度」と「確定給付制度」に分類されます(下記)が、法令上の「確定拠出年金(企業型DC)」、「確定給付企業年金」と必ずしも一致するわけではありません。
① 確定拠出制度 …一定の掛金を外部に積み立てる制度で、事業主である企業が当該掛金以外に退職給付に係る追加的な拠出義務を負わない退職給付制度
②確定給付制度…確定拠出制度以外の退職給付制度
確定拠出制度の会計処理
退職給付制度の費用は確定拠出制度・確定給付制度とも「退職給付費用」といいます。確定拠出制度の場合は要拠出額をもって費用処理します。過去勤務に係る要拠出額で未拠出の額は未払金として計上します。
例えば企業型DCで3月分の事業主掛金を4月25日に拠出する場合の仕訳例は次のとおりです。
3月31日 退職給付費用 〇〇円 / 未払金 〇〇円
4月25日 未払金 〇〇円 / 現金預金 〇〇円
(注)確定給付制度も採用している場合はいずれの退職給付費用かを区分して処理します。
上記はあくまで一例であり個別の取扱いは公認会計士等にご確認ください。
確定拠出制度実施企業が財務諸表に記載すべき事項
確定拠出制度については、次の事項を連結財務諸表及び個別財務諸表に注記します。ただし連結財務諸表に注記している場合には、個別財務諸表において記載しないこともできます。
(制度の種類・対象者・導入時期・重要な制度変更等)
(2) 確定拠出制度に係る退職給付費用の額
(3) その他の事項
(リスク分担型制度における拠出額の改定予定等)
確定給付制度の会計処理
貸借対照表上の負債
連結財務諸表では、「積立状況を示す額」(=退職給付債務から年金資産の額を控除した額)を負債として計上します。 未認識債務(未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用)は税効果を調整のうえその他の包括利益累計額に計上します。
個別財務諸表では、「退職給付引当金」(=積立状況を示す額から未認識債務を控除した額)を負債として計上します。
退職給付債務は、退職により見込まれる退職給付の総額のうち、期末までに発生していると認められる額を割り引いて計算することが原則です。この計算には退職率・昇給率・割引率等を用います。ただし小規模企業等では要支給額を用いる簡便な方法も認められています。
退職給付費用
退職給付費用は、①退職給付債務の増加要因(勤続期間の増加【勤務費用】と割引期間の減少【利息費用】の影響)、②年金資産の増加要因(運用収益見込【期待運用収益】の影響)、③未認識債務(給付改善や想定外の運用利回り、想定外の退職等で発生)の費用処理額で構成されます。
このため実際の拠出額と直接連動するものではありません。
主な退職給付制度と退職給付会計上の取扱い
主な退職給付制度と退職給付会計上の取扱いは次のとおりです。
制度 | 根拠法 | 会計上の区分 | 退職給付費用 |
企業型DC | 確定拠出年金法 | 確定拠出制度 | 要拠出額 |
中小企業退職金共済 | 中小企業退職金共済法 | ||
特定退職金共済 | 所得税法施行令 | ||
リスク分担型DB(※1) | 確定給付企業年金法 | ||
総合型DB等(※2) | 確定給付制度 | ||
キャッシュバランス型DB(※3) | 給付算定式等から計算 | ||
その他の一般的DB | |||
退職一時金 | - |
※1 確定給付企業年金法施行規則第 1 条第 3 号に規定するリスク分担型企業年金のうち、財政状況に応じて給付を増減することで企業は規約に定められた掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っていないと認められる制度(詳細は企業会計基準委員会実務対応報告第33号「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」参照)。
※2 複数の事業主により設立されたDBを採用している場合で、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができない制度として確定拠出制度に準じた会計処理を行う制度(詳細は企業会計基準委員会企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」33項参照)。