キャリアアップ助成金制度におけるDCの取扱い

キャリアアップ助成金制度とは
キャリアアップ助成金制度とは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成するものです(厚生労働省サイト「キャリアアップ助成金」参照)。
正社員化支援 | 正社員化コース | 有期雇用労働者等を正社員化 |
障害者正社員化コース | 障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換 | |
処遇改善支援 | 賃金規定等改定コース | 有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を改定し3%以上増額 |
賃金規定等共通化コース | 有期雇用労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金規定等を新たに規定・適用 | |
賞与・退職金制度導入コース | 有期雇用労働者等を対象に賞与または退職金制度を導入し支給または積立てを実施 | |
短時間労働者労働時間延長コース | 有期雇用労働者等の週所定労働時間を延長し、社会保険を適用 |
正社員化コースについて
正規雇用労働者とは
この制度における「正規雇用労働者」の定義は以下のとおりです。
同一の事業所内の正規雇用労働者に適用される就業規則が適用されている労働者。ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る。
企業型DCはここでいう「退職金」に該当しますが、iDeCoについては事業主による掛金拠出を伴う場合でも「退職金」には該当しません。
3%の賃金増額
支給の申請にあたっては、正社員化後6ヶ月の賃金が正社員化前6ヶ月と比べて3%以上増額していることが必要です。
企業型DC(事業主掛金の拠出)と前払受給を選択できる場合の留意事項
企業型DCに関するQ&Aの追加
令和5年4月1日に厚生労働省が公表した「キャリアアップ助成金Q&A 」(4月12日に更新)の「①-3正社員化コースにおける賃金3%以上の増額について」では、企業型DCに関する次のQ&Aが追加されました(図は当サイトで一部加工)。
【Q-6】
正社員転換後、基本給の一部を生涯設計手当として支給しており、うち一部を企業型確定拠出年金へ運用している場合は、どのように計上するのでしょうか。
基本給 |
↓
基本給 | 前払 受給 (B) |
DC 運用 (A) |
||
生涯設計手当 |
【回答】
・「生涯設計手当」が退職金を原資としている場合は、算定対象外です。
(本来退職後に受け取るはずの退職金を、前もって受け取っているにすぎないため。)
・企業型確定拠出年金についても、その原資として退職金の前払い分が充当されている場合は、算定対象外です。
ただし、原資が前払い退職金であったとしても、以下のア~ウすべてに該当する場合には、
企業型確定拠出年金の掛金運用額(A) 及び
掛金運用額を除いた額(前払い退職金として給与と合わせて支給される額)(B)
の合計額が賃金算定の対象となり得ます。
ア Bが給与所得として課税対象となっており、所得税、住民税がかかるほか、社会保険料の標準報酬の算定に含まれ、かつ、雇用保険法上でも賃金として取り扱われている
イ A及びBの合計額が昇給額、残業代、賞与及び退職金等の算出基礎額になることが就業規則等に明記されている
ウ A及びBの合計額が実費補填及び毎月変動する性質の手当ではない
なお、上記イの算出基礎額にAが含まれていない場合は、Bのみ賃金算定の対象となり得ます。
(本来退職後に受け取るはずの退職金を、前もって受け取っているにすぎないため。)
・企業型確定拠出年金についても、その原資として退職金の前払い分が充当されている場合は、算定対象外です。
ただし、原資が前払い退職金であったとしても、以下のア~ウすべてに該当する場合には、
企業型確定拠出年金の掛金運用額(A) 及び
掛金運用額を除いた額(前払い退職金として給与と合わせて支給される額)(B)
の合計額が賃金算定の対象となり得ます。
ア Bが給与所得として課税対象となっており、所得税、住民税がかかるほか、社会保険料の標準報酬の算定に含まれ、かつ、雇用保険法上でも賃金として取り扱われている
イ A及びBの合計額が昇給額、残業代、賞与及び退職金等の算出基礎額になることが就業規則等に明記されている
ウ A及びBの合計額が実費補填及び毎月変動する性質の手当ではない
なお、上記イの算出基礎額にAが含まれていない場合は、Bのみ賃金算定の対象となり得ます。
今回のQ&Aの特徴
企業型DC(事業主掛金の拠出)と前払受給を選択できる制度では、「事業主掛金」か「前払受給」かによって法令上の取扱いが分かれることが一般的ですが、今回の取扱いでは
・その原資が退職金か否か
・税・社会保険・雇用保険等、各種法令における取扱い
・他の労働条件における取扱い
を含めて審査しており、極めて特徴的な取扱いといえるでしょう。