金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2023」 におけるDC運営管理機関の商品選定等に係る分析と提言

金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2023」の公表

令和5年4月21日に金融庁は「資産運用業高度化プログレスレポート 2023―「信頼」と「透明性」の向上に向けて ―」を公表しました金融庁サイト「『資産運用業高度化プログレスレポート2023』の公表について」参照)。今回のレポートでは、DC運営管理機関の商品選定等について分析と提言がなされています。

提示する運用商品について

運用商品の選定や運営管理機関の選定

同レポート図3-4、3-5では、企業型DCとiDeCoの「運営管理機関別の系列資産運用会社の投資信託の割合」が掲載されています。これによると提示されている投資信託の概ね6~7割が系列資産運用会社の投資信託となっています。

このレポートでは、「企業においては、DC加入者の長期的な資産形成に資するよう、選定基準を設定して採用商品を検討し、運営管理機関においては、企業による加入者への効果的な投資教育の実施に資するよう、企業への情報提供を充実させることが期待される」とされています。
現在は提示する運用商品の上限は35本ですが、このレポートでは「資産運用会社間の公平な競争を促す観点からは、金融リテラシーの低い加入者には限られた本数の運用商品を厳選して選定し、金融リテラシーの高い加入者は幅広い選択肢の中から運用商品を選択できるような制度設計が理想的である」とされています。
また、「企業が運営管理機関を客観的に評価することは難しい」ため、「運営管理機関各社が、加入者の年代別運用商品の構成や加入時以降の運用商品全体の利回り平均とその分布といった客観的なデータや、企業の継続教育を支援する取組みなどについて、自主的な開示を行うことが望ましい」とされています。
同レポート図3-3の「運営管理機関別の加入者の運用商品の構成(残高ベース)」によると、運営管理機関(大手11社)の残高に占める投資信託の構成割合は約4割~約7割とばらつきがあります。


またこのレポートでは指定運用方法について、「全ての加入者が資産形成に向けて企業型 DC の制度を有効活用できるよう、企業による指定運用方法の設定を義務化し、企業が加入者の資産形成に資する指定運用方法の設定を検討することが望ましい」とされています。

移換時の資産のキャッシュ化

このレポートでは転職時や運営管理機関変更時の資産のキャッシュ化を問題視しており、「転職時の商品のポータビリティが実現するよう、レコードキーパー同士のデータ連携の仕組みが導入されることが理想的である」とされています。ただしレコードキーパーは大手2社で約9割のシェアを占めており、資産のキャッシュ化は同一レコードキーパー間の転職でも起こっていることから、キャッシュ化回避のためにはより詳細に現状を分析することが必要かもしれません。