「年単位化」した企業型DC加入者はiDeCoに加入(併用)できない?(令和4年10月改正)

企業型DC加入者のiDeCo加入(併用)

年金制度改正法(令和4年10月施行)における基本的な取り扱い

年金制度改正法「令和2年確定拠出年金改正法案(年金制度改正法案)の公布」参照)により企業型DC加入者はマッチング拠出を選択しない限り原則として誰でもiDeCoに加入(拠出)できるようになります。

社会保障審議会企業年金・個人年金部会で示された「年単位化」の課題

しかし令和2年6月17日の社会保障審議会企業年金・個人年金部会厚生労働省サイト「同部会参考資料1」参照)では、「年単位化」した企業型DCの加入者はiDeCoに加入できない旨政令で定めることを検討していることが示され(下記)、委員からも肯定的な発言がありました。

 企業型DCの掛金が、① 毎月拠出ではない場合 、② 月の上限額5.5万円を超えて拠出する月がある場合、といった政令で規定されている(※)、いわゆる「年単位化」の制度を導入している場合には、ある月のiDeCoの拠出限度額である「全体の拠出限度額から事業主掛金を控除した残余 」がその月内に確定しないこととなる。

 年単位で企業型DCとiDeCoの掛金を調整しようとすると、

例外的な年単位化への対応のために大規模 なシステム改修を要すること
② のちに事業主掛金が増額された場合には iDeCo 掛金の還付が生じるなど制度 ・ 実務が複雑となること

等を踏まえ、企業型DCの掛金又はiDeCoの掛金が年単位化している場合の取扱いを検討する 。(政令事項)

※ 現在は規定されていないため、今後規定することが想定されているのかもしれません。

 「5.5万円超拠出する月がある場合」禁止の意図すること

上記では5.5万円超の拠出を禁止しているため、その年の過去の拠出限度額の未使用枠を当月の事業主掛金に充てて拠出することはできません。iDeCoの掛金も同様と推測されます。その場合iDeCoの拠出限度額は「5.5万円ーその月の事業主掛金」(上限2万円)となります。

「年単位化」の企業型DCの特定

「年単位化」とは平成30年1月の確定拠出年金法改正で認められた取扱いです。部会資料で「例外的な」と記載されているので、何らかの形で数値が把握されているのでしょう。

①「毎月拠出以外」の企業型DCの把握

「毎月拠出以外」を行うには規約変更が必要となり、その把握は容易でしょう。

②「月の上限額5.5万円(2.75万円)を超えて拠出する月がある企業型DC」の把握

法令上の拠出限度額は「5.5万円(2.75万円)にその年のそれまでの拠出限度額の未使用額を加算した額」です。

このため掛金算出時の「給与×一定率」が「5.5万円(2.75万円)」を超える制度の場合、掛金の上限を「5.5万円(2.75万円)」以下に抑える必要がある制度では規約等に特別な規定が必要となり、抑える必要がない制度では特別な規定は必要ありません。
一方「給与×一定率」が「5.5万円(2.75万円)」を超えない制度では、特別な規定を設けなくても掛金は結果的に「5.5万円(2.75万円)」以下に抑えられることとなります。ただし何も規定していない場合、今後の昇給によっては超過が起こります。

このため対象制度を規約や規定だけで把握することは容易ではないようにも思われますが、厚生労働省が「例外的」と記載したのはそれを把握する仕組みが何かあるのかもしれません。

「マッチング拠出」における年単位化の課題

拠出限度額のうち事業主が拠出しなかった額しか本人が拠出できないというのはマッチング拠出も同様です。平成30年1月の確定拠出年金法改正(年単位化)以降のマッチング拠出額の上限は次のいずれか低い額です。

① 事業主掛金額累計(直前12月以降の月に係る累計額)
 -前月までのマッチング拠出累計額

② 拠出限度額(1か月あたり)の累計(直前12月以降の月に係る累計額)
 -当月までの事業主掛金額累計額
 -前月までのマッチング拠出累計額

これには今回の部会で回避を検討している煩雑な管理が必要となり、それを一般企業に求めた場合には相当の混乱が予想されます。しかしそのような記事は見ていないことから、「年単位化前ルール」のような運営が実態として容認されているものと推測されます。もしそうであれば、今回iDeCoとの併用要件が政令等で示される際に、マッチング拠出の要件に係る法令も整備されるべきでしょう。

「年1回変更」「金額指定」要件の課題

企業型DCの事業主掛金が給与比例の場合、加入者が拠出できる額は変動します。しかし金額は「金額指定のみ」で変更は「年1回のみ」しか認められない場合、法令上拠出限度額まで拠出できなくなる場合や、面倒で掛金変更の指図を断念する場合が予想されます。

これを改善するには、例えば事業主掛金の増減があっても「法令上の上限額」まで拠出する金額変動型の選択肢を認める、あるいは「年1回のみ」変更要件を撤廃する、といった規制緩和が必要でしょう。もちろん実務上対応できない制度に強いることはできませんが、例えば実務上対応できるマッチング拠出実施企業(iDeCoも対応可能?)においては拠出限度額が今よりも有効に活用できるでしょう。