「年単位化」した企業型DC加入者はiDeCoに加入(併用)できない(令和4年10月改正)

【記事公開後の更新情報】 

令和3年8月6日に公布された「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」11条で確定拠出年金法施行令11条の2が改正され、下記内容が規定されました。

企業型DC加入者のiDeCo加入(併用)

年金制度改正法(令和4年10月施行)における基本的な取り扱い

年金制度改正法「令和2年確定拠出年金改正法案(年金制度改正法案)の公布」参照)により企業型DC加入者はマッチング拠出を選択しない限り原則として誰でもiDeCoに加入(拠出)できるようになります「企業型DC加入者のiDeCo加入(併用)【令和4年10月DC法改正】」参照)

社会保障審議会企業年金・個人年金部会で示された「年単位化」の課題

しかし令和2年6月17日の社会保障審議会企業年金・個人年金部会厚生労働省サイト「同部会参考資料1」参照)では、「年単位化」した企業型DCの加入者はiDeCoに加入できない旨政令で定めることを検討していることが示され(下記)、委員からも肯定的な発言がありました。

 企業型DCの掛金が、① 毎月拠出ではない場合 、② 月の上限額5.5万円を超えて拠出する月がある場合、といった政令で規定されている(※)、いわゆる「年単位化」の制度を導入している場合には、ある月のiDeCoの拠出限度額である「全体の拠出限度額から事業主掛金を控除した残余 」がその月内に確定しないこととなる。

 年単位で企業型DCとiDeCoの掛金を調整しようとすると、

例外的な年単位化への対応のために大規模なシステム改修を要すること
② のちに事業主掛金が増額された場合には iDeCo 掛金の還付が生じるなど制度 ・ 実務が複雑となること

等を踏まえ、企業型DCの掛金又はiDeCoの掛金が年単位化している場合の取扱いを検討する 。(政令事項)

※ 部会開催時点では規定されていませんが、既に規定を求める方針が決定していたものと推測されます。

確定拠出年金法施行令11条の2の改正(令和3年8月6日公布)

令和3年8月6日に公布された「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」11条で確定拠出年金法施行令11条の2が次のとおり改正されました。

第十条の二ただし書の規定により事業主掛金を拠出する場合又は第十条の四ただし書の規定により企業型年金加入者掛金を拠出する場合(十二月から翌年十一月までの十二月間に企業型年金加入者の資格を喪失した後、再び元の企業型年金の企業型年金加入者の資格を取得した者に係る事業主掛金又は企業型年金加入者掛金を拠出する場合を含み、企業型年金規約において次のいずれかの事項を定めている企業型年金の企業型年金加入者に該当しない者(以下この条において「個人型年金同時加入可能者」という。)に該当しない場合に限る。)におけるその拠出こととなった日に係る事業主掛金又は企業型年金加入者掛金のは、企業型年金加入者期間の計算の基礎となる期間につき、十二月からその拠出することとなった日の属する月の前月までの各月の末日における前条各号に掲げる企業型年金加入者の区分に応じて当該各号に定める額(その拠出に係る拠出区分期間以前の拠出区分期間に個人型年金同時加入可能者に該当する期間がある場合にあっては、当該期間に係る当該各号に定める額を除く。)を合計した額から、その拠出に係る拠出区分期間より前の拠出区分期間に係る事業主掛金及び企業型年金加入者掛金の額(その拠出に係る拠出区分期間より前の拠出区分期間に個人型年金同時加入可能者に該当する期間がある場合にあっては、当該期間に係る事業主掛金及び企業型年金加入者掛金の額を除く。)の総額を控除した額を超えてはならない。

  事業主掛金を、企業型掛金拠出単位期間を一月ごとに区分した期間ごとに拠出する方法以外の方法により拠出すること。

  各企業型年金加入者に係る事業主掛金を、この項の規定により、事業主掛金を拠出する日の属する月の前月の末日における前条各号に掲げる企業型年金加入者の区分に応じて当該各号に定める額を超えて拠出すること

 第十条の二ただし書の規定により事業主掛金を拠出する場合又は第十条の四ただし書の規定により企業型年金加入者掛金を拠出する場合(個人型年金同時加入可能者に該当する場合に限る。)におけるその拠出することとなった日に係る事業主掛金又は企業型年金加入者掛金の額は、企業型年金加入者期間の計算の基礎となる期間につき、その拠出することとなった日の属する月の前月の末日における前条各号に掲げる企業型年金加入者の区分に応じて当該各号に定める額を超えてはならない

(略)

 

これにより「年単位化」した企業型DC加入者はiDeCoに加入(併用)できないこととなりました。

また同日発出された通知「企業型DC加入者の iDeCo 加入の要件緩和に係る対応について」によると、「年単位化」している場合は、その内容に変更がなくとも令和4年10月までにその旨記載する規約変更(承認申請)が求められます(注)。一方で、月の上限額5.5万円を超えて拠出することができるように読める規約であっても、規約変更せずに、令和4年10月以降は「年単位化」していない制度として運営することも認められます。

(注)平成30年1月の法改正ではこちらが法令どおりの拠出限度額であったにも関わらず、少数派であるがゆえに翻弄されているような印象を受けます。なお、この規約変更は通常よりも2カ月早い令和4年6月末が申請期限とされています。

 なお、今回はiDeCoにおけるシステム改修の困難さを理由として政令が見直されましたが、マッチング拠出では同様の困難が予想されたにも関わらず平成30年1月改正時の法令通知では特段の配慮がなされていないため、関連する法令通知の整備が必要かもしれません。