同一労働同一賃金における待遇格差の理由の説明と「その他の事情」
【記事公開後の動向】
この法律の施行から6カ月遅れて令和2年10月にDC・DBの通知に同一労働同一賃金に係る規定が追加された他、DC加入対象外とされた有期雇用労働者への代替措置の要件も見直されました(「同一労働同一賃金ガイドラインのDC・DB通知への反映(令和2年10月)」参照)。
パートタイム・有期雇用労働法の施行と退職金・企業年金における不合理な格差の解消
令和2年4月1日(中小企業は令和3年4月1日)に「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理 の改善等に関する法律」(いわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」)が施行されることから、関連する報道等も増加しています。退職金や企業年金(企業型DC等)でも不合理な格差を解消することが必要ですが、派遣労働者についてはかなり明確に規定されたものの、パートタイム・有期雇用労働者については未だ明確ではありません(「パートタイム・有期雇用労働法の公布と退職金・企業年金への同一労働同一賃金の適用」参照)。
待遇の格差に関する説明義務
パートタイム・有期雇用労働法14条2項では、待遇の格差に関する説明義務について次のとおり規定しています。
法14条2項 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。 |
そして、理由の説明について、指針(事業主が講ずべき短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針)では次のとおり規定されています。
指針第3の2(3)待遇の相違の理由 事業主は、通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、待遇の性質及び待遇を行う目的に照らして適切と認められるものに基づき、待遇の相違の理由を説明するものとする。 |
このため、退職金や企業年金の格差の理由を説明する際は、格差の理由となった相違(注)が退職金や企業年金の性質や目的に照らし適切であることが必要です。
(注)職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情(下記)の相違。
職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情とは
不合理な待遇の禁止(法8条)
上記指針のとおり、事業主が説明する格差の理由は「職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情」のうち、待遇の性質及び待遇を行う目的に照らして適切と認められるものでなければなりません。これはパートタイム・有期雇用労働法8条に沿った規定です。
(不合理な待遇の禁止) |
「業務の内容」とは
「業務の内容」については通達で次のとおり規定されています。
「業務」とは、職業上継続して行う仕事であること。 |
「責任の程度」とは
「責任の程度」については通達で次のとおり規定されています。
「責任の程度」とは、業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等をいうこと。具体的には、 責任は、外形的にはとらえにくい概念であるが、実際に判断する際には、責任の違いを表象的に表す業務を特定して比較することが有効であること。また、責任の程度を比較する際には、所定外労働も考慮すべき要素の一つであるが、これについては、例えば、通常の労働者には所定外労働を命ずる可能性があり、短時間・有期雇用労働者にはない、といった形式的な判断ではなく、実態として業務に伴う所定外労働が必要となっているかどうか等を見て、判断することとなること。例えば、トラブル発生時、臨時・緊急時の対応とし て、また、納期までに製品を完成させるなど成果を達成するために所定外労働が求められるのかどうかを実態として判断すること。 |
「その他の事情」とは
「その他の事情」については通達で次のとおり規定されています。
「その他の事情」については、職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に関連する事情に限定されるものではないこと。具体例としては、職務の成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、事業主と労働組合との間の交渉といった労使交渉の経緯などの諸事情が「その他の事情」として想定されるものであり、考慮すべきその他の事情があるときに考慮すべきものであること。また、ガイドラインにおいて「有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることは、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かを判断するに当たり、短時間・有期雇用労働法第8条のその他の事情として考慮される事情に当たりうる。定年に達した後に有期雇用労働者として継続雇用する場合の待遇について、様々な事情が総合的に考慮されて、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かが判断されるものと考えられる。したがって、当該有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることのみをもって、直ちに通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違 が不合理ではないと認められるものではない」とされていることに留意すること。 |