確定拠出年金(DC)から確定給付企業年金(DB)等への資産移換(転職時等)
※ 逆方向の「DB等からDCへの移換」は「確定給付企業年金(DB)・厚生年金基金・企業年金連合会から確定拠出年金(DC)への資産移換(退職時等)」参照。
【記事公開後の更新情報】
退職給付制度の改廃がない場合(離転職等の場合)で、確定拠出年金(DC)から資産を移換できる制度は確定給付企業年金(DB)のみでしたが、企業型DCから企業年金連合会への移換も可能とする法案が国会に提出され同年5月29日に成立し6月5日に公布されました(「令和2年確定拠出年金改正法案(年金制度改正法案)の国会提出」参照)。
(改正は赤字で記載)
DCに加入していた者(又は個人型DC加入者)のDBへの移換
確定給付企業年金(DB)側の要件
確定給付企業年金(DB)側の要件としては、確定給付企業年金(DB)規約で確定拠出年金(DC)からの移換を認めていること、及び確定給付企業年金(DB)の加入者であること(加入時期は平成30年5月の法施行より前でも可)が必要です。移換を認めている場合(注)は確定給付企業年金(DB)加入時(又は移換を認める規約変更を行ったとき)に会社の担当者からその旨説明されるはずです。
(注)退職給付会計上「確定拠出制度」に準じた処理を行えるDB(「退職給付会計上の「確定拠出制度」と「確定給付制度」の会計処理」参照)以外で移換を認める制度は稀と思われます。
確定拠出年金(DC)側の要件
移換元のDCに資産があることに加え、次の要件があります。
企業型DCからDBに移換する場合
企業型DCの資産を移換する場合、当該企業型DCの加入者資格を喪失していることが必要です。
移換できるのは、通常は企業型の加入者資格喪失後6ヵ月以内に限られます。
個人型DCからDBへの移換
個人型DC(iDeCo)の加入者、運用指図者、連合会移換者(自動移換者)のいずれの状態でも資産を移換できます。加入者の場合、移換後も個人型DC(iDeCo)の加入者として掛金を拠出することができます。
DCからDBへの移換に慎重になるべき場合
確定拠出年金(DC)から確定給付企業年金(DB)に資産を移換できる場合でも、移換した方が良いかどうかは一概にはいえません。60歳前の退職時に受給できるようにしたい場合は移換したほうが良いでしょう。それにこだわらない場合は、例えば次の場合は移換について慎重に検討すべきでしょう。
・退職所得控除額を超過しそうな場合(「老齢給付金(一時金)に係る退職所得控除額」参照)
確定拠出年金の通算加入者等期間の取扱い
確定拠出年金(DC)の通算加入者等期間のうち、移換額に係るDC加入者期間(DCへの移換額に係るDC加入者期間に準ずる期間を含む)は移換により原則として除かれますが、運用指図者期間は残ります。ただし資産がなくなると時効(10年)により通算できなくなる場合があるので注意しましょう(「通算加入者等期間の通算」(記録のみ有する者の通算加入者等期間の通算)参照)。
DCから企業年金連合会(通算企業年金)への移換
DCから企業年金連合会(通算企業年金)への移換は令和4年5月から可能となりました(企業型DCのみ)。
(注)手続きや企業年金連合会からの給付については企業年金連合会サイト「企業型確定拠出年金から企業年金連合会への個人別管理資産の移換」参照。
確定拠出年金(DC)側の要件
・移換元の「企業型」DCに資産があること。
・移換の申出は企業型DCの資格喪失日の属する月の翌月から起算して6月以内に行うこと。
離転職時のDB以外の制度への移換に係る留意事項
一般的な離転職の場合、DB以外の制度に移換することはできません。
次の制度への移換については注意が必要です。
DCから中小企業退職金共済(中退共)への移換
DCから中小企業退職金共済(中退共)への移換は、①合併等に伴う退職給付制度の再編時であって、②企業型DCからの移換で、一定の要件を満たす場合に限り認められます(「中退共・特退共と確定拠出年金(企業型・iDeCo)の併用と移換の可否」参照)。①で使用される事業主の変更を伴う場合もありますが、企業が退職給付制度の再編を行う場合に限られるため、実態としては制度改廃時に近いと考えられます。