退職金(DB)・iDeCo・企業型DCの一時金請求時期をずらす(同じ年にする)ことによる退職所得の節税例

複数の退職所得がある場合で課税されそうな場合の留意事項

確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)の老齢給付金(一時金)への課税

確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)では60歳以降老齢給付金を一時金で受給すると退職所得となり、加入者期間(掛金が拠出された期間)に応じた退職所得控除額「確定拠出年金の老齢給付金に係る退職所得控除額と収入時期」参照)が適用されます。

複数の退職所得がある場合

調整が必要となる場合

退職金や確定給付企業年金(DB)・中小企業退職金共済等の他の退職所得に係る勤続期間と重複する期間がある場合は、次のいずれかに該当する場合は、退職所得控除額の調整が必要となる(DCまたは他の給付の退職所得控除額が少なくなる)場合があります。

① DCの給付の収入時期の前年以前14年以内に他の退職所得がある場合
② DCの給付の収入時期が他の退職所得の前年以前4年以内の場合

DCの請求時期の調整による退職所得控除額の調整回避

このため、DCや退職金(企業年金)等の一時金受給額が退職所得控除額を超えそうな場合で①または②に該当する場合には、DCの請求時期をずらすことで①②に該当しないようにできれば、調整(減少)前の退職所得控除額が適用され、節税できる場合があります。

DCの請求時期の調整による退職所得控除額の調整ルールの選択

また①または②に該当し、退職所得控除額の調整が必要となる場合でも、

③ DCの給付の収入時期が他の退職所得と同じ年か否か「確定拠出年金の老齢給付金に係る退職所得控除額と収入時期」参照)

によって退職所得控除額の調整ルールが異なるため、③の条件を変えた場合には、税額の増減が起こる場合があります。

収入年度が同じか否かで課税額が異なるケース(参考例)

前提(退職金と確定拠出年金の給付がある場合)

・60歳のときに勤続期間19.5年で退職し退職金を受給
・勤続期間のうち後半の9.5年は確定拠出年金(DC)に加入
・DCの給付額は500万円
・退職金の額は、ケースA:300万円、ケースB:900万円
・DCの請求時期は、ケース①:60歳、ケース②:61歳
 (ケース①は退職金と同じ年の収入、ケース②は退職金の翌年の収入)

試算結果



受給額
(勤続期間)
退職した年の課税計算
(退職所得控除額の勤続年数(※1)
退職翌年の課税計算
(退職所得控除額の勤続年数(※1)と重複期間(※2)
退職金
(年)
DC
(年)
退職所得控除額(※3) 収入金額 課税退職所得
(※4)
退職所得控除額
(※3)
収入金額 課税退職所得
(※4)
A① 300万
19.5年
500万
9.5年
800万
(20年)
800万 0
A② 300万 0 400万
(10年)
重複0年
500万 50万
B① 900万
19.5年
1400万 300万
B② 900万 50万 80万
(10年)
重複9年
500万 210万

※1 重複算入しないように通算(年未満切上)。
※2 前年以前4年内(DCの支払の場合は前年以前14年内)に他の支払者から支払われた退職手当等がある場合の重複期間(年未満切捨)。ただし前の退職手当等の額が退職所得控除額に満たない場合は、前の勤続年数を退職所得控除額を使った年数に短縮して重複期間を計算。
※3 20年以下は「40万円×勤続年数」(下限80万円)。
※4 (収入金額ー退職所得控除額)÷2。

解説

上の例ではケースAは同じ年になるように受給した方が、ケースBは同じ年にならないように受給した方が有利になります。
両方の給付を合算して判定しても別々に判定しても退職所得控除額の枠内に収まる場合は特段の注意は不要ですが、退職所得控除額を超過する場合には、有利な受給方法を検討しましょう。

(注1)退職所得は他の所得と分離して課税されます。
(注2)同じ年に2か所以上から退職金等を受給する場合、最初の受給時の源泉徴収税額が2か所合計の源泉徴収税額を上回る場合があります。その場合、差額の還付を受けるためには確定申告が必要です。
(注3)ここでは一時金の請求時期による節税について記載しましたが、一部を年金で受給することで節税できる場合もあります(「確定拠出年金における年金の受給方法」参照)ので、併せてご検討ください。