iDeCoと企業型DCの選択(メリット・デメリット)・併用・前払退職金

【記事公開後の更新情報】

令和2年3月3日に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」が国会に提出され同年5月29日に成立し6月5日に公布されました「令和2年確定拠出年金改正法案(年金制度改正法案)の国会提出」参照)。この法律には企業型DC加入者が規約に規定することなくiDeCoに加入できるようにする改正が含まれています。
(改正は赤字で記載)

企業型DCに加入できる場合のDC加入の選択肢

企業型DCが加入選択制の場合

加入選択制の企業型DCに加入できる従業員の場合、確定拠出年金(DC)への加入に係る当該従業員の選択肢は次のとおりです。なお、④は企業型DC規約にその旨規定されている場合に限ります。

 ①企業型DCに加入
 ②個人型DC(iDeCo)に加入
 ③どちらにも加入しない
 ④企業型DCと個人型DC(iDeCo)双方に加入(注)
  (注)企業型DC規約で認めている場合に限ります。(※)
     規約に定める場合の制約は最後に記載しています。
   ※ この要件は撤廃される予定【令和4年10月施行予定】

必ず企業型DCの加入者となる場合

企業型DCに加入しなければならない場合(選択できない場合)のDC加入の選択肢は、企業型DC規約により①のみか、①と④の2つです。

 ①企業型DCに加入
 ④企業型DCと個人型DC(iDeCo)双方に加入(注)
  (注)企業型DC規約で認めている場合に限ります。
     規約に定める場合の制約は最後に記載しています。

企業型DCの加入者となれない場合

厚生年金保険の被保険者でない場合や公務員の場合、企業型DCの加入者とはなれません。
また勤務先が企業型DCを実施していない場合や、実施していても職種等が加入対象となっていない場合も企業型DCには加入できません。
これらの場合(企業型DC選択に加入できない場合)のDC加入の選択肢は②と③の2つです。

 ②個人型DC(iDeCo)に加入
 ③どちらにも加入しない

DCへの加入(拠出)に慎重になるべき場合

確定拠出年金は税制優遇により効率的に老後資金が準備できるため、老後資金をこれから自分で準備する必要がある場合は積極的に企業型DCや個人型DC(iDeCo)を活用すべきです(拠出時・運用時の節税効果は「確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)における運用・税・節税効果(積立額試算)」参照) 。
ただし、家計の状況(下記)等によっては、当面拠出を控えたり、他の制度で準備した方が良い場合「個人型DCと国民年金基金や国民年金付加年金(付加保険料)との比較」「DCとNISAや財形年金貯蓄との比較」参照)もあろうかと思います。次のような場合には企業型DCや個人型DC(iDeCo)への拠出に慎重になるべきでしょう。

・60歳までに手元資金が不足しそうな場合
・60歳直前で過去分のDC資産がない場合
  (「確定拠出年金における給付(老齢・障害・死亡・脱退)と税」参照。)
・近日中に企業型DCに加入しそうな場合
・所得税を納めていない場合
・返済すべき借入がある場合

DCに加入する場合

個人型DC(iDeCo)と企業型DCの比較

会社の企業型DCが希望者のみ加入する制度だった場合、企業型DCに加入しなければ個人型DC(iDeCo)に加入することができます。両制度には次のような違いがありますので、DCに加入する場合は両者を比較して加入する制度を選びましょう。
なお、ここでは企業型DCに加入しなかった場合、前払退職金(現金)が支給されることを想定していますが、退職金や企業年金の場合にはそれらの制度の特徴も考慮する必要があります。

  個人型DC
(iDeCo)
企業型DC
加入や加入者資格喪失(拠出中止)の任意性 加入は任意(60歳迄)、喪失も任意 任意加入の制度も可(60~65歳喪失)、任意喪失は不可
拠出額
(DB等非加入)
0.5~2.3万円/月
の範囲内で自身が選択
5.5万円/月※1
以下で規約に従い算定
拠出額
(DB等加入)
0.5~1.2万円/月
の範囲内で自身が選択
2.75万円/月※1
以下で規約に従い算定
拠出時の税制優遇
の仕組み
所得控除※2 会社拠出は給与所得に係る収入金額の対象外※3
本人拠出は所得控除※2
社会保険料
労働保険料
(及び関連給付)
影響なし 事業主掛金は対象外※4
運営管理手数料
資産管理手数料
自己負担 加入中は企業負担
制度が多数
運用商品の選択肢 自身が選択した運営管理機関の提示商品 労使合意で決定した運営管理機関の提示商品
会社の支援
(教育・手続き)
一般に限定的 一般に個人型DC(iDeCo)よりも充実

※1 個人型同時加入不可の場合の拠出限度額を記載。個人型同時加入可の場合は各々「企業型3.5万円+個人型2万円」、「企業型1.55万円+個人型1.2万円」。(注)
 (注)個人型同時加入制度への企業型限度額引下げ要件は撤廃される予定(個人型の限度額は企業型の未使用枠内で2万円/1.2万円が上限)【令和4年10月施行予定】

※2 「個人型DCやマッチング拠出における節税額の試算」参照。
※3 「選択型DC等における節税額の試算(年収・家族構成別)」参照。
※4 一般的と思われる取り扱いを記載していますが、制度毎の取り扱いは会社にご確認ください。

個人型DCと企業型DCのいずれに加入すべきか

企業型DCの運営管理手数料や資産管理手数料を企業が負担してくれる場合、そのメリットは大きいと思われます。また、加入せず前払いされるよりも社会保険料や労働保険料も低くなります(対応する給付は減少)。
ただし、企業型DCで少額の拠出しか認められない場合は、所得税の軽減効果が個人型DC(iDeCo)よりもかなり小さくなる場合もあります。また例えば企業型DCで提示されている運用商品の手数料が高めに設定されている場合(注)には、事務手数料を自ら負担してでも個人型DC(iDeCo)に加入したほうが良いケースも考えられます。

(注)令和元年7月以降は他の運営管理機関の提示商品一覧もインターネットで公表されており、明らかに不適切な商品が提示され続ける可能性は低くなると思われます。公表内容は厚生労働省サイトの運営管理機関一覧にもリンクされています(厚生労働省サイト「確定拠出年金制度」3.確定拠出年金の各種データ『運営管理機関登録業者一覧』参照)。

企業型DCとiDeCoの同時加入(併用)

企業型DC規約において、企業型DC加入者が個人型DC(iDeCo)に加入することを認めることができます(※)。その場合、通常の企業型DCと比べて次のような制約があります。
※ 全ての規約で同時加入が認められるようになる予定【令和4年10月施行予定】

事業主掛金の拠出限度額が低くなる(※)

ア.確定給付企業年金(DB)等に加入していない場合
  ・・・月5.5万円から月3.5万円に引き下げ
   (iDeCoの拠出限度額は月2.0万円
イ.確定給付企業年金(DB)等に加入している場合
  ・・・月2.75万円から月1.55万円に引き下げ
   (iDeCoの拠出限度額は月1.2万円

※ 事業主掛金の引き下げは不要となる予定【令和4年10月施行予定】
  (iDeCoの掛金は「拠出限度額ー事業主掛金」も上限となる)

マッチング拠出ができなくなる

同一制度(企業型DC)内にマッチング拠出できる加入者とiDeCoに拠出できる加入者が混在することは認められない(※)ため、iDeCoとの同時加入を認めた制度では、本人がiDeCoに拠出していない場合でもマッチング拠出は認められません
※ マッチング拠出実施企業では混在が可能となる予定【令和4年10月施行予定】