DCにおける資産移換と企業型DC・iDeCo間の資産移換(移管)

移換(移管)とは

確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)や企業年金、退職金、中小企業退職金共済(中退共)間で資産を移すことを「移換」(注)(または「資産移換」)といいます。

(注) 当サイトではDC法上の表記にあわせ「移管」ではなく「移換」を用いています。

確定拠出年金実施企業の退職時(転職時)等の移換

確定拠出年金や他の企業年金実施企業への入社時(加入者資格の取得時)、退職時(加入者資格の喪失時)には、法令上移換が認められるケースや移換が義務付けられているケースがあります。また確定拠出年金の加入者や運用指図者である間であれば、加入者資格の取得時や喪失時以外でも移換できる制度もあります。

確定拠出年金における資産移換を大きく分類すると次のとおりです。

会社の退職給付制度改に伴う移換

会社の退職給付制度改廃時には固有の移換要件が法令上定められています(「退職金・確定給付企業年金・厚生年金基金・中退共から企業型DCへの資産移換と中退共への資産移換(制度改廃時)」参照)。この要件による移換(注)は制度改廃時の一時的なものです。

(注)制度の創設による加入者資格の取得や、制度の廃止による加入者資格の喪失の場合には、離転職時と同様に加入者資格の得喪時の移換要件も適用されます。

確定拠出年金(DC)間の資産移換パターン

確定拠出年金(DC)間の資産移換には次の移換パターンがあります。

●企業型DC実施企業退職後、転職先の企業型DCに加入する場合(※1)
 A.(旧)企業型から(新)企業型への移換(本人の申出による場合)
 B. 〃 (本人の申出によらない場合①)(※2)
 C.(旧)企業型から個人型への移換(本人の申出による場合)

●企業型DC実施企業退職後、企業型DCに加入しない場合
 D. 〃 (本人の申出による場合)
  (F.企業型DCの運用指図者であった者の申出による場合)  

 E. 〃 (本人の申出によらない場合②)(※2)
 G. (旧)企業型から連合会移換(自動移換)(本人の申出によらない場合③)

●個人型DC加入者・運用指図者が企業型DCに加入した場合
 H. 個人型から企業型への移換(本人の申出による場合)
 I. 個人型の資産を企業型加入後も個人型に据置

●連合会移換者(自動移換者)が企業型DCに加入した場合
   J. 連合会移換者(自動移換者)の資産を企業型に移換(本人の申出による場合)
   K.  〃 (本人の申出によらない場合)(※2)

連合会移換者(自動移換者)が個人型DC(iDeCo)に加入した場合
 L.
連合会移換者(自動移換者)の資産を個人型に移換(本人の申出による場合)(※3)
 M. 〃 (本人の申出によらない場合)(※2)

●連合会移換者(自動移換者)がDC(iDeCo・企業型)の加入者でない場合
 N.  〃 (本人の申出による場合)

※1 会社が企業型DCを終了し新たに別の企業型DCを設立した場合(勤務は継続)を含みます。

※2 「金融機関側で自動手続き」と記載していても、登録個人情報の不一致により移換手続きがなされない場合があります。登録情報の誤りに気づいた場合は早めに訂正を求めましょう。なお、(旧)企業型DCで60歳到達や障害により受給権を取得している場合には自動的に移換されることはありません。

※3 ここでは国民年金基金連合会の資産のうち、iDeCo(個人型DC)の加入者及び運用指図者の資産を「個人型の資産」、連合会移換者(自動移換者)の資産を「連合会移換者の資産」と記載し、両者間の資産管理方法の変更も便宜上「移換」と記載しています。

(注) 実務上の取扱いの詳細は移換元制度の運営管理機関等にご確認ください。なお個人型DCと他制度間の移換に係る要件の一部は個人型年金規約で独自に規定されています。その重要性や公共性を考えると、例えば平成30年5月の移換に係る個人型年金規約(特に12章)の改正案などは公示前にパブリックコメントを実施したほうが良かったかもしれません。

(旧)企業型DCから(新)企業型DCへの移換

企業型DC実施企業退職後、転職先の企業型DCに加入する場合

 
A.(旧)企業型DCの加入者資格を喪失し(新)企業型DCの加入者となる者が、喪失後6ヵ月以内に(新)企業型DCへの移換を申し出た場合
 
B.A.の下線の者が、喪失後6ヵ月移換の申出をしなかった場合(金融機関側で自動手続き)
 

(旧)企業型DCから個人型DC(iDeCo)への移換

企業型DC実施企業退職後、転職先の企業型DCに加入する場合(続き)

C.A.の下線の者が、喪失後6ヵ月以内に個人型DC(iDeCo)への移換を申し出た場合(※)

※ この場合、上記AまたはBにより(新)企業型DCに移換することができるため、一般的には(新)企業型DCに移換し個人型DC(iDeCo)の事務費を0にする方が有利と思われます。ただし、例えば次の場合にはCを選択した方が良い場合もありそうです。

・企業型個人型同時加入者となる場合
 (個人型の事務費が0にできない場合)
・退職予定日が近い場合
・企業型DCの提示商品が個人型DC(iDeCo)の提示商品よりもかなり劣る場合

企業型DC実施企業の退職(企業型DC実施企業への転職以外)

D.(旧)企業型DCの加入者資格を喪失し他の企業型DCの加入者とはならない者が、喪失後6ヵ月以内に個人型DC(iDeCo)への移換を申し出た場合

E.D.の下線の者が、喪失後6ヵ月移換の申出をしなかった場合で、かつその時点で個人型DC(iDeCo)の加入者(運用指図者)であった場合(金融機関側で自動手続き)

企業型DC運用指図者の申出

F.企業型DCの運用指図者であった者が申し出た場合(※)

※ 一般的には企業型DCの運用指図者を続け(又は一時金で給付を受け)、移換手数料や資産売買の発生を回避すると思われますが、例えば次の場合には移換した方が良い場合もありそうです。

・企業型DCが終了し運用指図者を継続できない場合
・企業型の事務手数料(本人負担)や提示商品が個人型DC(iDeCo)よりかなり劣る場合

(旧)企業型DCの資産を移換し連合会移換者(自動移換者)に

企業型DC実施企業の退職(加入者資格喪失)

G.D.の下線の者が、喪失後6ヵ月移換の申出をしなかった場合で、かつその時点で個人型DC(iDeCo)の加入者(運用指図者)でなかった場合(金融機関側で自動手続き)

(注) 連合会移換者(自動移換者)となることの是非については「iDeCo・企業型DCに係る手数料と連合会移換(自動移換)」参照。

個人型DC(iDeCo)から企業型DCへの移換

個人型DC(iDeCo)加入者(運用指図者)が企業型DCに加入

H.個人型DC(iDeCo)の加入者(運用指図者)が企業型DCの加入者となった(なっている)場合で、移換を申し出た場合

(注1)企業型加入直後でなくても企業型加入中なら移換できます。
(注2)企業型DC規約で個人型同時加入を認めていれば、移換後も個人型に同時加入できます。

個人型DC(iDeCo)の資産を個人型に据置

I.H.の場合でも、移換を申し出なければ、個人型DC(iDeCo)の資産は個人型に据え置かれます。(※)

※ 企業型DCに移換(上記H.)して個人型DC(iDeCo)の事務費を0にする方が一般的には有利と思われます。ただし、例えば次の場合には個人型DC(iDeCo)に据置(上記I.)を選択した方が良い場合もありそうです。

・企業型個人型同時加入者となる場合
 (個人型DC(iDeCo)の事務費が0にできない場合)
・退職予定日が近い場合
・企業型DCの提示商品が個人型の提示商品よりもかなり劣る場合

連合会移換者(自動移換者)の資産を企業型DCに移換

連合会移換者(自動移換者)が企業型DCに加入する場合

J.連合会移換者(自動移換者)が企業型DCの加入者となり、企業型DCへの移換を申し出た場合

K.連合会移換者(自動移換者)が企業型DCの加入者となり、移換を申し出なかった場合(金融機関で自動手続き)

連合会移換者(自動移換者)の資産を個人型DC(iDeCo)に移換

連合会移換者(自動移換者)が個人型DC(iDeCo)に加入する場合

L.連合会移換者(自動移換者)が個人型DC(iDeCo)の加入者となり、個人型DC(iDeCo)への移換を申し出た場合

M.連合会移換者(自動移換者)が個人型DC(iDeCo)(のみ)の加入者となり、移換を申し出なかった場合(金融機関で自動手続き)

連合会移換者(自動移換者)が個人型DCの運用指図者となる場合

N.連合会移換者(自動移換者)が当該資産を個人型DC(iDeCo)で運用する(個人型DCの運用指図者となる)旨申し出た場合