年金制度改正法案(令和7年)の成立とDC改正(70歳までのiDeCo加入、マッチング拠出上限緩和等)

「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」の成立
令和7年5月16日に国会に提出された「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」は衆議院で修正のうえ、6月13日に成立しました(厚労省サイト「年金制度改正法が成立しました」参照)。この法律にはDCの改正も含まれており、iDeCoに加入できる年齢の上限が65歳から70歳に引き上げられる他、マッチング拠出額を事業主掛金以下とする規制も撤廃されます。
法案の概要
この法案には次の内容が含まれています(厚労省サイト「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案の概要」参照)。
Ⅰ.公的年金制度の見直し
1.被用者保険の適用拡大等
① 短時間労働者の適用要件のうち
・賃金要件を撤廃する。
・企業規模要件を令和9年10月1日から令和17年10月1日までの間に段階的に撤廃する。
② 常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種を解消し被用者保険の適用事業所とする。
※ 既存事業所は、経過措置として当分の間適用しない。
2.在職老齢年金制度の見直し
支給停止となる収入基準額を50万円(令和6年度価格)から62万円に引き上げる。
3.遺族年金の見直し
① 18歳未満の子のない20~50代の配偶者を原則5年の有期給付の対象とし、60歳未満の男性を新たに支給対象とする。
② 子に支給する遺族基礎年金の支給停止規定を見直す(遺族基礎年金の受給権を有さない父母と生計を同じくする場合)。
4.厚生年金保険等の標準報酬月額の上限の段階的引上げ
上限額を65万円から75万円に段階的に引き上げる(68万円→71万円→75万円に段階的に)。
最高等級の者が被保険者全体に占める割合に基づき改定できるルールを導入する。
5.将来の基礎年金の給付水準の底上げ(法案修正)
次期財政検証において基礎年金と厚生年金の調整期間の見通しに著しい差異があり、基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合には、必要な法制上の措置を講ずるものとする。
Ⅱ.私的年金制度の見直し
① 個人型確定拠出年金の加入可能年齢の上限を70歳未満に引き上げる。
② 企業年金の運用の見える化(情報開示)として厚生労働省が情報を集約し公表することとする。
DC法改正案
DC関連では、次の改正がなされました(公布の日から3年以内の政令で定める日に施行)。
この他、簡易型DCも廃止されます。
(厚労省サイト新旧対照条文参照)
1.マッチング拠出額(企業型DCの加入者拠出額)を事業主掛金額以下とする規制を撤廃
2.60歳以上で国民年金の被保険者資格を喪失した者等であっても次の者(※)は70歳までiDeCoへの加入を認める
①申出の日の前日において個人型年金加入者または個人型年金運用指図者であったもの
②iDeCoに他の制度からの資産等の移換を申出たもの
※ 老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受ける権利の裁定を受けた者等は除く