「金融サービス提供法」におけるDC実施事業主の誠実義務(金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律)
【記事公開後の更新情報】
令和6年11月20日に運営管理機関に対する金融庁事務ガイドラインが改正されたことを反映しました。
令和6年1月31日に公布された「金融商品取引法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」において、同法附則第1条第2号の施行日が令和6年2月1日とされたことを反映しました。
「金融商品取引法等の一部を改正する法律」の成立
令和5年11月20日に「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(金融庁サイト「国会提出法案(第211回国会)」参照)が成立し11月29日に公布されました。今回の改正では非財務情報の開示の充実を進めると共に、企業開示の効率化も併せて行われ、四半期報告書制度の廃止等が決定しました(令和6年4月1日施行)。この他、「金融サービスの提供に関する法律」の改正により、顧客本位の業務運営の確保や金融リテラシーの向上も進められました(令和6年2月1日施行)。
「金融サービスの提供に関する法律」の改正
題名及び目的の改正
今回の改正では「金融サービスの提供に関する法律」の題名が「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」に改められ、金融サービスの提供等を受ける顧客等の保護及び金融サービスの利用環境の整備等が図られています。
金融リテラシーの向上措置
「基本方針」の策定と「金融経済教育推進機構」の創設
金融経済教育の推進等による金融リテラシーの向上、金融機関による顧客本位の業務運営など、安定的な資産形成の支援に係る施策を、政府一体となって強力に推進する観点から、「国民の安定的な資産形成の支援に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針」を策定(閣議決定)するとともに、金融経済教育を行う「金融経済教育推進機構」を設置することとされました。
顧客等に対する誠実義務(新設)
金融サービスの提供等に係る業務を行う者に対して、横断的に、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に業務を遂行する義務が新設されました。DCやDBを実施する事業主も対象となります。
DCにおける「対象業務」
DCにおける対象業務は「個人別管理資産の運用」及び「積立金の管理」に関する業務(及び政令で定める付随関連業務)です。
DCにおける「顧客等」
DCにおける「顧客等」とは加入者(及び政令で定める者)を指します。
DCにおける「金融サービスの提供等に係る業務を行う者」
事業主、運営管理機関、資産管理機関、国民年金基金連合会(及びDC法61条の事務の委託を受けた者)とされました。
(ご参考)運営管理機関に対する金融庁事務ガイドラインの改正
令和6年11月20日に「事務ガイドライン 第三分冊:金融会社関係 11 確定拠出年金運営管理機関関係 新旧対照表」が改正されました。今回の改正では「加入者の最善の利益を勘案した誠実公正義務」として以下の内容が追加されました(金融庁サイト「事務ガイドライン 第三分冊:金融会社関係 11 確定拠出年金運営管理機関関係 新旧対照表 」参照)。
確定拠出年金運営管理機関には、運営管理業の担い手として、社会に付加価値をもたらし、同時に自身の経営の持続可能性を確保していくために、加入者(金融サービス提供法第2条第1項に規定する加入者をいう。以下同じ。)の最善の利益を勘案しつつ、加入者に対して誠実かつ公正にその業務を遂行することが求められる。そのため、確定拠出年金運営管理機関は、必ずしも短期的・形式的な意味での利益に限らない「加入者の最善の利益」のあり方を考え、これを実現するために自らの規模・特性等を踏まえ、組織運営や商品・サービス提供も含め、加入者に対して誠実かつ公正にその業務を遂行する必要があること。