公務員やDB加入者のiDeCo(イデコ)拠出限度額の2万円への引き上げ(令和6年12月施行)

【記事公開後の更新情報】

令和6年4月15日の国民年金基金連合会による個人型年金規約の変更公告イデコ公式サイト「お知らせ」2024/04/15参照)を反映しました。

令和4年夏に日本私立学校振興・共済事業団が共済掛金相当額を7千円と推計したことを反映しました。

令和4年1月21日に公布された次の省令及び同日発出された通知(Q&A)等を反映しました。

令和3年9月1日に公布された次の政省令及び同日発出された通知(Q&A)を反映しました。

会社員・公務員等のiDeCo拠出限度額見直し

令和3年9月1日に「確定拠出年金法施行令及び公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令の一部を改正する政令」が公布され、令和6年(2024年)12月からDCの拠出限度額が見直されることとなりました。

これにより、公務員・確定給付企業年金(DB)または厚生年金基金に加入している会社員・私学共済に加入している教職員等のiDeCoの拠出限度額が見直されます。確定給付企業年金(DB)等に加入していない会社員は、中退共や特退共に加入していても影響はありません。

国民年金第2号被保険者(会社員・公務員等)のiDeCoの拠出限度額

企業年金・公務員共済への加入状況iDeCo拠出限度額(月額)
確定給付企業年金(DB)
・私学共済等への加入
企業型DCへの加入~2024年11月2024年12月~(注1)
月額2.75万円-各月の企業型DCの事業主掛金額
(ただし、月額1.2万円を上限
月額5.5万円-DB等の他制度掛金相当額(注2)-各月の企業型DCの事業主掛金額
(ただし、月額2万円を上限

公務員を含む
×
月額1.2万円月額5.5万円-DB等の他制度掛金相当額(公務員は共済掛金相当額)
(ただし、月額2万円を上限
×月額5.5万円-各月の企業型DCの事業主掛金額
(ただし、月額2万円を上限
××月額2.3万円

(注1)iDeCoについては、拠出限度額が減少する場合でも企業型DCのような経過措置は設けられていません。
(注2)各DBの他制度掛金相当額は、事業主より周知されます(厚労省サイト(チラシ)「DBを実施する事業主・基金及び厚生年金基金の皆さまへ 」参照)。
    私立学校教職員共済の加入者及び石炭鉱業年金基金の坑内員等に係る他制度掛金相当額は、今後厚生労働大臣が告示します。
         令和4年夏に日本私立学校振興・共済事業団は共済掛金相当額の見込を7千円と推計しています(日本私立学校振興・共済事業団「レター2022年夏号」)。
(注3)公務員の拠出限度額は次のとおり見直されます。

現在(月額)変更後(月額)
1.2 万円2万円(注)

(注)「共済掛金相当額」が3.5万円超の場合は「5.5万円-共済掛金相当額」
  公務員の年金払い退職給付の毎月の保険料は標準報酬の1.5%で1万円未満となっています。

  厚生労働省は過去に現在の保険料の計算方法をそのまま使うことはないと説明していましたが、それでも共済掛金相当額が3.5万円を超える可能性は低いものと推測されます。
  実際に適用される公務員の共済掛金相当額は今後厚生労働大臣が公示します。

iDeCoの拠出限度額が5千円未満だとiDeCoの加入者資格を喪失

上の表で算出されるiDeCoの拠出限度額が個人型年金規約で定める個人型年金の最低掛金額(5,000 円)を下回る場合、掛金を拠出できず、iDeCoに加入するこ等とはできません。
加入後に下回ることとなった場合には、「企業型掛金拠出者等」に該当するため加入者の資格を喪失し(第36条1項6号)、iDeCoの運用指図者となります。
(法令上の要件を満たす移換先制度があればその制度に移換することが、脱退一時金等の給付の要件(資産額25万円以下等)を満たしていれば給付を受けることができます。)

(参考)企業型DCでは拠出限度額が0円(拠出不可)でも継続加入が可能

企業型DCでは、他制度掛金相当額の合計が月額5.5万円を上回ることとなり、事業主掛金を拠出できなくなった場合でも、加入者資格は継続します。
企業型DCでは事務費を会社が負担する制度が多いため、本人が負担する事務費の抑制という点では加入者に有利になることが多い取り扱いと考えられます。

(厚労省サイト確定拠出年金Q&A70-2)

Q. DB、存続厚生年金基金、私立学校教職員共済制度及び石炭鉱業年金基金に係る他制度掛金相当額の合計が月額5.5万円を上回ることとなった加入者については、事業主掛金を拠出することができないが、加入者資格を喪失するのか。

A. 法第11条に規定する資格喪失事由に該当しないため、喪失せず、事業主掛金0円で加入者資格が継続することになる。

企業型DCの拠出限度額

DB・私学共済等加入状況現在(月額)変更後(月額)
経過措置期間中(注1)経過措置終了後
加入2.75万円2.75万円5.5万円-他制度掛金相当額(注2)」
非加入5.5万円

(注1)施行時に2.75万円未満となる場合は2.75万円とする経過措置が適用されます。
   経過措置の終了時期は次のいずれかに該当した場合です。
   ・企業型DCの事業主掛金を変更した場合
   ・DBの給付設計を変更し掛金が変更された場合

(注2)各DBの他制度掛金相当額は、事業主より周知されます(厚労省サイト(チラシ)「DBを実施する事業主・基金及び厚生年金基金の皆さまへ 」参照)。
    私立学校教職員共済の加入者及び石炭鉱業年金基金の坑内員等に係る他制度掛金相当額は、今後厚生労働大臣が告示します。
         令和4年夏に日本私立学校振興・共済事業団は他制度掛金相当額の見込を7千円と推計しています(日本私立学校振興・共済事業団「レター2022年夏号」)。

 

他制度掛金相当額(DB仮想掛金)の算定方法

多くの確定給付企業年金(DB)が採用している「加入年齢方式」の場合は次の式で算定されます。

標準的な加入者の給付現価÷標準的な加入者の人数現価

計算基礎率は標準掛金の計算と同じものを使うとされたため、「定額」掛金の場合は標準掛金と同額になるものと予想されます。

給与比例掛金の場合、全加入者の標準掛金の単純平均額は、若い人を中心に設立した新しい会社だと若い人寄り、採用を抑えて高年齢化が進んだ会社だと高年齢者寄りの金額になることが一般的ですが、この方法だと人員構成の偏りに左右されることはありません(退職率が高いと若い人寄りの掛金になります)。

予定新規加入者の加入時の給与

【基準】

他制度掛金相当額の算出には標準掛金の計算に用いた「基礎率」を用いることと省令で規定されました。しかし他制度掛金相当額の算出に必要となる「予定新規加入時給与」は、この「基礎率」に含まれていないため、今回通知(Q&A)で次のとおり基準が示されました。

A3.
加入年齢方式における標準的な加入者の加入時の給与は
 ①定常状態における給与総額が基準日の給与総額と一致するように見込む方法
 ②昇給指数算定時の「予定新規加入年齢における補正給与」を用いて見込む方法
 ③実績の平均を用いる方法
等、適正な年金数理に基づいて見込む。

【影響】

今回3つ(以上)の選択肢が認められたことで、今後は許容範囲内で最も低い算出方法を求める動きが進むかもしれません。採用した方法は原則として継続して用いることとされたため、DB導入企業は初回算出時に各選択肢を慎重に比較検討することが必要です。

【課題】

予定新規加入時給与については、通知(Q&A)でも「恣意的な操作を排除」する必要性に言及していますが、そうであれば、やはり特定の計算方法を示すことが望ましかったと考えられます。特定の計算方法についてはパブリックコメントや審議会で意見を求めることも効果的だったかもしれません。現在示されている3つの方法以外にも、基礎率と従業員構成から一意的に算出できる

予定新規加入年齢の昇給指数
×(Σ全加入者の給与/Σ全加入者の年齢毎の昇給指数)

等、候補となる方法があるかもしれません。

他制度掛金相当額の算定方法(簡易な基準に基づくDBの場合)

加入者数が500名以下で簡易な基準に基づき掛金額を計算している企業では、標準掛金額の単純平均を用いることができます。

他制度掛金相当額(DB仮想掛金)の計算方法に係る経過措置

令和6年12月1日から、その後のDB等の財政計算(計算基準日が令和6年12月1日以降の財政計算)までは、標準掛金額の単純平均を用いることができます。
(DB加入者の拠出限度額が2.75万円となる経過措置については前掲)

いつから改正されるか

この政令改正の施行日は令和6年12月1日です。
今回の法令改正で拠出限度額が増加する場合で、新たに認められる水準までiDeCoの掛金を引き上げたい場合には、令和6年12月よりも前に加入者掛金額変更の届出書を提出することができます。
iDeCoの届出手続き(必要書類や提出時期等)については、加入している各運営管理機関のサイト等において今後情報提供がなされるものと思われます。