確定拠出年金(企業型DC)への事業主掛金の決め方・拠出事務・拠出期限・拠出漏れ対応
【記事公開後の更新情報】
令和4年10月以降企業型DC加入者は原則としてiDeCoに加入(拠出)できるとされていましたが、令和3年8月6日に公布された「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」で掛金の拠出方法によってはiDeCoへの拠出が認められないこととなりました(「「年単位化」した企業型DC加入者はiDeCoに加入(併用)できない(令和4年10月改正) 」参照)。
(留意点は赤字で記載)
企業型DCへの事業主掛金の決め方
事業主掛金の決め方は、①定額(全員同額)、②給与×一定率、③定額+給与×一定率、のいずれかとする必要があります。給与は実際に支給する給与に限定されず、DCの掛金算出のために設定した額を「給与」として用いることができます。
例えば勤続年数別定額掛金は「定額」掛金としては認められませんが、「勤続年数別給与×8.3%」や「勤続ポイント×千円×100%」と「給与×一定率」の形にすれば認められます。
ただし事業主が恣意的に決定できる「給与」は認められません。また不自然な給与についてはその可否を事前に地方厚生局(運営管理機関)に確認した方が良いでしょう。
事業主掛金拠出時の留意事項
確定拠出年金(企業型DC)の事業主掛金は、法令及び規約に従い所定の時期に正しい額を拠出することが必要です。確定拠出年金の給付額は拠出額とその運用益から成りますが、運用益は運用商品の選択状況により異なるため、拠出額の誤りや拠出時期の誤りがあると、運用益への影響額を過不足なく補償することができず、確定拠出年金制度の運営に対する信頼を損なうこととなります。このため、適切な拠出に向けて、事前の記録関連運営管理機関(RK)への掛金データへの提出、更にそのための必要情報の入手やチェック・修正を行うことが必要です。
企業の担当者が事業主掛金算出のために入手すべき情報(例)
① 昇給や昇格情報(給与比例掛金や資格別掛金の場合)
② 休職/欠勤情報 (拠出中断や掛金の欠勤調整がある場合)
③ 事業主掛金額の選択情報(「掛金選択型DC」の場合)
④ 拠出限度額に影響を与える情報(注)
(注)確定給付企業年金等への加入情報(「企業型DCの拠出限度額」参照)
事業主掛金額の計算や妥当性チェック(例)
① 「給与×掛金率」や「掛金テーブル」による掛金額計算
② 拠出上限額チェック(「企業型DCの拠出限度額」参照)
(注)超過時は規約等に従い掛金を拠出限度額※以下に修正し、超過額は規程に従い前払等を実施。
※ 拠出限度額の未使用枠の繰越により1月あたりの拠出限度額よりも多く拠出できる企業型DCの加入者は令和4年10月の法改正後もiDeCoには加入できません。
③ 掛金選択額チェック(選択できない額を選択した場合は再選択または規約に従い修正)
④ 掛金選択時期チェック(選択できない時期であればその旨本人に通知)
確定拠出年金(企業型DC)の事業主掛金の拠出中断
確定拠出年金(企業型DC)の加入者期間となる月(月払の場合)に勤務せず給与も支給されない場合には、その休職等の事由が確定拠出年金(企業型DC)規約で定めた拠出中断事由であれば事業主掛金の拠出を中断します(※)。
※ 厚生労働省サイト「確定拠出年金制度」 確定拠出年金Q&A №.71
掛金の拠出期限
確定拠出年金の掛金の拠出期限は、月払の場合は各加入月の翌月末となります。月払以外の場合(複数の加入月分をまとめて拠出する場合)※は最後の加入月の翌月末となります。
(注)受託機関の実務ルール上期日が早まる場合があります。
※ 月払以外の企業型DCの加入者は令和4年10月の法改正後もiDeCoには加入できません。
企業型DCにおける過少拠出時の対応
昇給や昇格情報が掛金データ作成時に連携されなかった等の理由により、会社が企業型DCに拠出した事業主掛金が過少であった場合、事後的に追加拠出を行うことは従来認められませんでした。
それが平成30年1月の確定拠出年金法改正(年単位化)にあわせ、当該下回った額もその年の12月までに(11月以前の掛金として)納付されるのであれば企業型DCの事業主掛金として拠出できる※こととなりました(厚生労働省サイト「確定拠出年金制度」確定拠出年金Q&A No.68-1(下記)参照)。ただしそのためには労使合意のうえ規約に定めることが必要とされています。このため制度導入時に(注)これについて労使協議を行うことも考えられます。
※ 当該上乗せがなされた月に1月あたりの拠出限度額よりも多く拠出できる企業型DCの加入者は令和4年10月の法改正後もiDeCoには加入できません。
Q68-1.事業主掛金の額の算定を誤って、拠出区分期間に係る本来の事業主掛金の額を拠出することができなかった場合に、拠出すべきだった掛金額と拠出した掛金額との差額を次の拠出区分期間に係る掛金の額に上乗せする事業主掛金の額の算定方法を事前に定めることは可能か。
A. 可能。ただし、事業主掛金の額を上乗せして拠出することができる拠出区分期間は、拠出すべきだった拠出区分期間と同一の企業型掛金拠出単位期間内である場合に限ることとし、上乗せして拠出する事業主掛金の額は、拠出すべきだった事業主掛金の額と同額とする算定方法でなければならない。
(注)制度導入後の過少拠出発生を契機として労使協議し規約に定めることもできますが、規約変更の標準審査期間は2カ月とされているため発生時期によっては12月の納付期限(11月掛金の変更期限)までに承認されないケースも起こりそうです。
企業型DCの事業主掛金の拠出に係る税務上の取扱い
事業主掛金は、税務上は拠出した時点で損金に算入されます。上の例では4月25日に損金に算入されます。退職金から移行した場合、移換額(定期的な移換額及び退職時の移換額)についても実際の移換(支払)がなされた時点で損金に算入されます。