連合会移換者(自動移換者)の増加報道について

連合会移換者(自動移換者)数に係る報道について

令和元年8月3日の新聞報道

令和元年8月3日の日本経済新聞では、次のような報道がなされています。

① 令和元年6月末の自動移換者は81万人(※)
② この人数は転職先に企業型確定拠出年金がない者の半数に達する。
③ 国民年金基金連合会は毎年自動移換者に本人に対応を促している他、運営管理機関も自動移換前に対応を促している。
④ 背景には加入者の認識不足がある。

※ ①は国民年金基金連合会のiDeCo公式サイト>ライブラリ>業務状況でも確認できます。

特定の企業や運営管理機関の問題か

上記③のような取組は他の多くの運営管理機関でもなされていると思われますが、厚生労働省は念のため特定の企業や運営管理機関で連合会移換者(自動移換者)が多くないか(多い場合は原因も)を調査し(注)、特定の企業や運営管理機関の対応に問題があるようであれば、必要な指導を行うべきでしょう。先日改定された業務報告書「確定拠出年金(企業型DC)の業務報告書の作成」参照)も役立つのではないでしょうか。

(注)単純な人数や割合の調査だけではなく、以下に記載しているとおり資産が少額の者を除いた割合も調査すべきでしょう。

認識不足の自動移換者とそうではない自動移換者

連合会移換者(自動移換者)発生の背景には記事の通り認識不足もあり、その改善を目指す必要があるでしょう。しかしそうではない連合会移換者(自動移換者)も多数含まれているものと思われます。

資産が0円の者

0円を「放置」することの合理性

資産が0円の者は手続きをしても受給額が直接増えるわけではありません。また50歳以降でDCに再度加入する予定がなければ受給年齢への影響もありません。このため資産が既に0円となっている者の多くにとって「放置」は合理的な選択のように思われます。

「80万人」か「50万人」か

以前企業年金部会で自動移換者の約4割の資産が0円と報告されています厚生労働省サイト第19回社会保障審議会企業年金部会資料「確定拠出年金における自動移換について」(平成29年6月30日)参照)。仮に今回の公表数値の4割が資産0円の者だとすると、その者を除いて報道すれば①の「81万人」は「50万人」程度となり、②の「半数に達する」は「半数に達しない」となるかもしれません。退職者や企業、国民年金基金連合会その他受託機関の多くが適切に対応しているにも関わらずそれとは異なる評価を世間から受けることがないよう、国民年金基金連合会による情報の公表のあり方も検討が期待されます。

脱退一時金を受給できる場合で放置する場合

資産が1.5万円以下であれば企業型DCの脱退一時金も受給できますが、あまりに少額すぎるとそれを請求することは手数料や手間に見合わないかもしれません。
例えば企業型DCにおいては、短期退職した場合に事業主掛金相当額の事業主返還を規定している制度「事業主掛金の事業主返還」参照)があります。これに該当した場合DCの資産は極めて少額となることが多いと思われますが、その場合は放置することも合理的な場合がありそうです。
連合会移換者(自動移換者)について、例えば①事業主返還前の資産額、②事業主返還後の資産額、③国民年金基金連合会への移換直後の資産額、等の状況がわかれば、脱退一時金を請求しないことに合理性が認められる者がどの程度含まれているか推測する材料となるでしょう。

脱退一時金を受給できない場合で放置する場合

資産が1.5万円を超えると脱退一時金は原則として受給できません。しかし資産が少ないと個人型DC(iDeCo)の運用指図者となっても資産減少のペースが連合会移換者(自動移換者)に近い場合もあるかもしれません。もしそうであれば放置にも合理性はあるでしょう。

以前の脱退一時金要件(50万円)

以前の脱退一時金要件には「50万円」という基準がありました。この金額を決定した際の根拠の一つが、手数料で資産が減少するかどうかだったと言われています。具体的な数式のイメージは次のとおりです。

50万円(DC資産)×1%(年間運用利回り)=5千円(年間事務費)

※「1%」の明確な根拠は把握していませんが、当時は元本確保型商品(保険商品)に利回りが1%前後の商品があったのではなかったでしょうか。

当時の国民年金基金連合会の資料厚生労働省サイト第1回企業年金研究会資料「個人型確定拠出年金制度の概況」(平成18年)参照)によると、資産が50万円を超えると移換手続きを行う割合が放置する割合を大きく上回っています。当時であれば資産が50万円超なのに放置している層には「認識不足」の退職者が多く含まれていたのかもしれません。現在は元本確保型商品の利回り等の運用環境や自動移換者(連合会移換者)の手数料、個人型DC(iDeCo)の手数料も変化しているため、資産額と放置割合の関係やその合理性も当時からは変化しているでしょうから、それを分析すれば退職者に役立つメッセージが出せるかもしれません。

なお、DCに掛金を拠出すれば資産が増えこの問題は生じないとの見方もあり、先の法改正ではこの考え方により加入者範囲の拡大にあわせ脱退一時金要件が厳格化されました(現在の要件と課題については「確定拠出年金における脱退一時金の受給要件と課題」参照)。しかし法律上拠出できても家計上拠出できない退職者に、資産の減少を受け入れさせるというのは制度として酷な印象を受けます。

関係団体の法令改正要望との関係

60歳で受給するための「通算加入者等期間10年」要件

現在は退職者に対し、連合会移換者(自動移換者)となると「60歳で老齢給付金を受給できなくなる」場合がある旨を説明することとされています。
現在DC関係団体からは、通算加入者等期間に関わらず60歳から老齢給付金を受給できるようにすべきとの要望が出されており、これが実現すれば連合会移換者(自動移換者)となることのデメリットが1つ解消されます。

「脱退一時金」要件

現在多くの団体が脱退一時金要件の緩和を要望しており、これが実現すれば資産が減少する前に受給できるようになるでしょう「関係団体の確定拠出年金制度改正要望」参照)

手数料の抑制による資産の減少の抑制

手数料による資産の減少を防ぐうえでは、手数料の引き下げも有効でしょう。例えば国民年金基金連合会が連合会移換者の資産を(保守的に)運用し、その運用益を連合会移換者の手数料引き下げに充てること等はできないのでしょうか。

退職時の説明だけで全ての退職者に拠出や移換を行わせることには限界があると思われます。その場合拠出等を行わなかった退職者の資産の減少を自己責任論で終わらせるのではなく、そういう人の資産も保全することを検討すべきではないでしょうか。

企業型DCや個人型DC(iDeCo)への自動的な移換

平成30年5月の制度改正

平成30年5月の確定拠出年金法改正により、企業型DCの加入者資格喪失者が他の企業型DCの加入者となった場合や個人型DC(iDeCo)の加入者や運用指図者となった(なっている)場合には、企業型DCや個人型DC(iDeCo)に自動的に資産が移換されるため、連合会移換者(自動移換者)とはなりません。

データ突合で「一部不一致」となった場合の取扱い

関係機関に期待すること

上記移換を行うためには、移換元と移換先で同一人物か否かを判定する必要があります。記事によれば、データの登録不備により一致しなかった場合に連合会移換者(自動移換者)となるようです。ただし記事ではその件数(割合)については言及されていません。
現在は基礎年金番号も記録関連運営管理機関(RK)で管理されており、件数(割合)はもしかするとあまり多くないかもしれません。しかし記事で不安を感じた人も多いと思われるため、関係機関は制度に対する信頼を損なわないためにも、データ突合方法や一部一致一部不一致の場合の同一人物確認作業等について、もし未公表であれば公表した方が良いでしょう。

退職者にできる対策

退職者の方は自ら手続きを行うことでデータ突合に係る移換もれを回避できます。また自動的に移換されるはずの資産が移換されていないようであれば、委託先運営管理機関か国民年金基金連合会に相談しましょう。