ドルコスト平均法はU字型右下がりモデルに注意(確定拠出年金の投資教育)

ドルコスト平均法とは

ドルコスト平均法とは、定期的に一定金額で投資信託等を購入する方法です。毎回の購入額が一定なので基準価額(以下便宜上「株価」とします)が高いときには購入口数が少なく、低い時には購入口数が多くなります。これにより毎回同じ口数を購入するよりも平均購入価額は安くなります。

一括購入とドルコスト平均法の損益比較

一括購入した場合とドルコスト平均法で積立投資を行った場合では、株価の推移と損益の傾向に次のような違いがあります。

  右上がり 右下がり
U字型 一括購入…益
ドルコスト…益
一括購入…損
ドルコスト…益
∩字型 一括購入…益
ドルコスト…損
一括購入…損
ドルコスト…損

※ 購入(開始)時と売却時の株価を比較し区分(U字/∩字の両端に極端な高低差はないものと仮定)。

一括購入の場合は購入開始時と売却時の価格差がそのまま損益に反映されます。
ドルコスト平均法の場合は購入開始から売却まで継続的に購入しますので、U字型だと購入価格は概ね売却価格を下回るため益に、∩字型だと購入価格は概ね売却価格を上回るため損になります(この効果をここでは「U字効果」とよびます)。

U字型右下がりモデル

株価の推移が下記青グラフ(☆)のU字型右下がりモデルの場合、12万円一括購入の場合と毎月1万円購入の場合の損益は下表のとおりです。このモデルを使い「一括購入だと損失が発生する場合でもドルコスト平均法による積立投資だと利益が出る場合がある」という説明を受けると、ドルコスト平均法が非常に優れた投資方法という印象を受けます。

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株価 (前月比) 一括購入 積立投資
1 10,000   120,000 10,000
2 9,000 90% 108,000 19,000
3 8,000 89% 96,000 26,889
4 7,000 88% 84,000 33,528
5 6,000 86% 72,000 38,738
6 5,000 83% 60,000 42,282
7 4,000 80% 48,000 43,825
8 3,000 75% 36,000 42,869
9 2,000 67% 24,000 38,579
10 3,000 150% 36,000 67,869
11 4,000 133% 48,000 100,492
12 5,000 125% 60,000 135,615
損益     -50% 13%

(出所)日本経済新聞電子版『日証協会長「まずは成功体験を」(投信観測所)』(令和元年7月31日)の数値表(出所:日本証券業協会)よりDCセカンドオピニオン作成

∩字型右上がりモデル

一方、株価の推移が上記赤グラフの∩字型右上がりモデルの場合、12万円一括購入の場合と毎月1万円購入の場合の損益は下表のとおりです。このモデルを使い「一括購入だと利益が発生する場合でもドルコスト平均法による積立投資だと損失が出る場合がある」という説明を受けると、ドルコスト平均法の印象は先ほどよりもずいぶん悪くなります。

株価 (前月比) 一括購入 積立投資
1 5,000   120,000 10,000
2 6,000 120% 144,000 22,000
3 7,000 117% 168,000 35,667
4 8,000 114% 192,000 50,762
5 9,000 113% 216,000 67,107
6 10,000 111% 240,000 84,563
7 11,000 110% 264,000 103,020
8 10,000 91% 240,000 103,654
9 9,000 90% 216,000 103,289
10 8,000 89% 192,000 101,812
11 7,000 88% 168,000 99,086
12 6,000 86% 144,000 94,931
損益     20% -21%

(出所)DCセカンドオピニオン作成

確定拠出年金の投資教育における留意事項

例えば企業型DCを実施する事業主(及び投資教育を委託された機関)が株式投資信託を説明する際に「U字型(またはU字型右下がり)モデル」だけを用いると良い印象を与えるための偏った説明とみられる可能性があるため、バランスをとった説明を行うことが望ましいでしょう(労働組合等もチェックすべきでしょう)。また従業員も金融商品の購入時はU字効果による印象の違いに注意しましょう。
なお人工的なモデルだけでなく、バブル期を運用開始時とする実績モデルも「U字型右下がりモデル」となりやすいので、注意しましょう「時間分散効果(積立投資の効果)とU字効果」参照)

株式投資信託等での運用

このような留意点はありますが、老後までの長期間で考えて物価以上の収益率が得られる可能性が高い運用を目指すというのは、多くの確定拠出年金加入者にあてはまる運用方針かと思います。その場合、物価以上の期待収益率が見込まれる投資信託は有力な選択肢となります。そして、長期投資や分散投資を行うことで老後に物価割れとなる可能性をある程度下げることは理論上可能でしょう(詳しくはeの右上にμやσのある数式を積分した解説等があったかと思います)。投資理論を踏まえた投資信託の魅力についてどのような伝え方が適切か関係者による検討が進められ、国民が広く理解を深めていくことが大切でしょう。