「通算拠出期間」と脱退一時金(iDeCo・企業型DC)

【記事公開後の更新情報】 

令和2年3月3日に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」が国会に提出され同年5月29日に成立し6月5日に公布されました「令和2年確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)改正法案(年金制度改正法案)の国会提出」参照)。これにより平成29年1月改正で禁止された国民年金被保険者となれない者(60歳未満)の脱退一時金の受給が令和4年5月に改めて可能となります(ただし施行前2年内の加入者資格喪失者までしか遡及しません)。

 また同法及び令和2年12月23日に公布された「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令」により通算拠出期間の「3年」要件が令和3年4月に「5年」に緩和されました。
(改正及び改正案は赤字で記載)

個人型DC(iDeCo)からの脱退一時金の受給  

保険料免除者(国民年金の第1号被保険者で障害等以外の理由により国民年金保険料の納付が免除されている者)(※1)は、次の要件を満たせば脱退一時金を受給できます。

① 障害給付金の受給権者でない。
② 掛金の通算拠出期間(下記)が5年(※2)以下、又は資産額が25万円以下
③ 企業型DC又は個人型DC(iDeCo)の加入者資格喪失後2年経過前。
④ 企業型DCからの脱退一時金(下記)を受給していない。(※3)

※1 国民年金の被保険者となれない海外帰国者等(60歳未満)も対象に(施行前2年内の加入者資格喪失者も③の要件を満たせば請求可能)【令和4年5月施行】
※2 3年から延長【令和3年4月施行】
※3 この要件は撤廃【令和4年5月施行】

「通算拠出期間」とは

確定拠出年金の「通算拠出期間」とは次の4つの期間を通算した期間です。

① 企業型DCの加入者期間
② iDeCo(イデコ)の加入者期間(※)
③ 退職金から確定拠出年金に資産を移換した場合はそれまでの勤続期間
④ 企業年金等から確定拠出年金に資産を移換した場合は企業年金等の加入期間

※ iDeCoの加入者期間のうち掛金を拠出していない期間は除きます。

「保険料免除者」≠「納付しなくてよい者」

個人型DC(iDeCo)からの脱退一時金受給要件である「保険料免除者」とは国民年金の第1号被保険者のうち生活保護等によりその納付を免除されている者です。このため「国民年金の保険料を納付しなくてよい者」であっても、例えば国民年金の被保険者でない者は「保険料免除者」には該当しません。

企業型DCからの脱退一時金の受給

次の要件をすべて満たせば(※)受給できます。
※ 個人型DCの受給要件を満たす者で対象となる資産が企業型DCにある者も下記①③を満たせば企業型DCから受給できることに【令和4年5月施行】

① 企業型DCや個人型DC(iDeCo)の加入者でも運用指図者でもない。
資産額が1万5千円以下
③ 当該企業型DCの加入者資格喪失後か6ヶ月経過前(注)

(注)期限内に移換額が入金されない場合は運営管理機関等にご確認ください。
 

「継続個人型年金運用指図者」の個人型DC(iDeCo)からの受給(経過措置)

平成29年1月の法改正前は「継続個人型年金運用指図者」も一定の要件を満たせば脱退一時金を受給できました。法改正前に企業型DCの加入者資格を喪失した場合、法改正後も法改正前の要件を満たせば脱退一時金を受給できます。

掛金の通算拠出期間が3年以下又は資産額が25万円以下

現在の脱退一時金要件(上記)と同様に、「掛金の通算拠出期間が3年以下又は資産額が25万円以下」という要件を満たす必要があります。

個人型DCの運用指図者期間が2年以上4年未満

この要件により請求できるのは、企業型DCの加入者資格喪失後、個人型DC(iDeCo)の運用指図者であった期間が2年以上4年未満に限られます。これは、「継続個人型年金運用指図者となった日から起算して2年を経過していないこと」という要件があり、継続個人型年金運用指図者となるには「個人型年金運用指図者となる申出をして2年を経過した者」という要件があるためです。なお、単に運用指図者であるだけでなく、後述する要件も満たすことが必要です。

「継続個人型年金運用指図者」とは

継続個人型年金運用指図者となる主な要件は、次のとおりです。

① (法改正前に)企業型DCの加入者資格を喪失した。
② ①の後に個人型DCの運用指図者となった。
③ ②の後、個人型DCの運用指図者の状態が継続している。
  (2年経過した時点から「継続個人型年金運用指図者」と呼ばれます。)
④ ①と②の間に自動移換され連合会移換者(「iDeCo・企業型DCに係る手数料と連合会移換(自動移換)」参照)となった期間があっても良い。
⑤ ①と②の間に「個人型DC加入者」「企業型DC運用指図者」となっていない。
⑥ ③の期間中は平成28年末の法令において個人型DCに加入できる状態(下記)。

平成28年末時点の要件では個人型DCに加入できない者

継続個人型年金運用指図者の要件(上記)の⑥を満たさない者、即ち平成28年末時点の要件で個人型DCに加入できない主な者は次のとおりです。

A.60歳以上の者
B.企業型DC加入者
C.企業型DCに加入できた(加入を選択できた)者
D.勤続期間要件があったため企業型DCへの加入を待期していた者
E.厚生年金基金(存続厚生年金基金)の加入員
F.確定給付企業年金の加入者
G.石炭鉱業年金基金の坑内員
H.私立学校教職員共済の被共済者
Ⅰ.公務員
J.国民年金の第3号被保険者(専業主婦等)
K.国民年金の被保険者でなくなった者


上記に⑥に該当するケース(注意すべき例)

次の制度の被共済者であった期間は平成28年以前から個人型DCに加入(拠出)できたため、上記⑥(脱退一時金受給)の妨げとはなりません。

 ア.中小企業退職金共済
 イ.特定業種退職金共済
 ウ.特定退職金共済

また次の期間は、個人型DCに拠出できない期間ですが、上記⑥(脱退一時金受給)の妨げとはならないとの見解が過去に厚生労働省より公表されています。

 エ.国民年金の保険料未納期間
 オ.農業者年金の被保険者期間