第3回税制調査会とJIRA(日本版個人退職年金勘定)構想(5.5万円イデコ)

第3回税制調査会における「老後に係る税制のあり方について」の議論

令和2年10月22日に第3回税制調査会が開催され、「老後に係る税制のあり方について」他2つのテーマについて議論されました内閣府サイト「第3回税制調査会 資料一覧」参照)

昨年の税制調査会答申における検討課題

昨年の税制調査会の答申「政府税制調査会答申「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制のあり方」」参照)では以下の事項が検討課題とされていたことから、今後はその検討が進められる見込みです。

①公的年金等控除から人的控除へ
②各種私的年金に共通の非課税拠出限度額(「穴埋め型」制度)
③受給方法(年金・一時金)に中立的な税制
④給与ともバランスの取れた税制
⑤転職有無(勤続20年到達有無等)に中立的な税制

JIRA構想(5.5万円イデコ)

第3回税制調査会では佐藤英明教授より「老後に係る税制の諸課題~日本版個人退職年金勘定(JIRA)の構想~」について報告されました第3回税制調査会資料「総3-3」参照)

JIRAとは米国個人退職年金勘定「IRA」「第10回社会保障審議会企業年金部会資料2」参照)の日本版で、その構想の特徴は次のとおりです。

5.5万円iDeCo(第2号被保険者)

国民年金の第2号被保険者については、企業年金(企業型DCや確定給付企業年金等)や個人年金(iDeCo等)への「会社拠出+本人拠出」の合計を月額5.5万円まで認める。このうち従業員拠出額は所得控除の対象となる。

年金として受給した場合は公的年金と同様に課税する。年金支給時の課税の適正化については、別途検討が必要。

「退職所得」の取扱い

退職所得は上記のJIRAの仕組みに取り込むものとし、通常の拠出限度額とは別枠で「退職金拠出限度額」を設ける。この「退職金拠出限度額」の水準を、現在の定年退職の際の退職所得控除額と同程度の水準とする。年金拠出限度額を超える退職金と、限度額内でもJIRAに拠出されなかった退職金は受給時に課税する。

JIRA構想で課題は解決するか

JIRA構想で税制調査会の検討課題が解決するかどうかという点では、例えば次の点が示されないと有効性の評価は難しいように思われます。

・退職金が支給される従業員と支給されない従業員の公平性はあるか
・JIRAに拠出されなかった一時金についてどのように課税するのか
・JIRAの年金にはどのように課税するのか
・中途退職者は「退職金拠出限度額」のうちいくらまで拠出できるのか
・拠出限度額の未使用枠の取扱い(繰り越しや再評価)