iDeCo・企業型DCに係る手数料と連合会移換(自動移換)
【記事公開後の更新情報】
令和元年10月に消費税が10%に引き上げられたことに伴い、手数料の見直しが行われました。
個人型DC(iDeCo)の手数料のしくみ
iDeCoの手数料発生のタイミング
個人型DC(iDeCo)では加入者等は確定拠出年金の運営管理機関や関係機関に以下に記載する事務手数料を支払います。詳しくはこの後記載しています。
① iDeCoの加入者(運用指図者)登録
② iDeCoでの掛金拠出
③ iDeCoの資産管理
④ 資産運用(運用指図を行った商品による)
⑤ iDeCoの口座管理
⑥ 他の制度への資産移換
手数料の負担方法や負担額
支払方法は個人の状況や手数料の種類によって、①掛金から控除、②資産から控除、③給付額から控除等に分かれます。支払額は運営管理機関によって異なり、加入者か運用指図者かでも異なります。また資産残高によっても異なる場合があります。手数料を比較したサイトもあるので、関心のある運営管理機関と他のいくつかの運営管理機関の手数料を事前に比較しておきましょう。
(注)下記金額や取扱いは改訂されている場合があります(今後も消費税の引き上げ時等に改訂される見込みです)ので最新の情報を運営管理機関等にご確認ください。
iDeCoの加入者(運用指図者)となる時点の手数料
確定拠出年金のうち個人型DC(iDeCo)の「加入者または運用指図者」となる場合、国民年金基金連合会に2,829円支払います。加入者の場合は初回掛金又は加入時に移換された資産から控除され、運用指図者の場合は移換された資産から控除されます。
iDeCoの加入者(運用指図者)期間中の手数料
iDeCoへの拠出時(掛金納付の都度)
個人型DC(iDeCo)の加入者は、掛金納付の都度、国民年金基金連合会に105円支払います(掛金から控除されます)。
iDeCoの資産管理事務手数料(加入者/運用指図者期間中)
個人型DC(iDeCo)の資産を管理している信託銀行に加入者や運用指図者である間継続的に支払う手数料で、月額66円の契約が多いようです。
各運用商品固有の手数料
確定拠出年金では選択した運用商品によっては当該商品固有の手数料も発生します(「確定拠出年金における運用と税」の「投資信託商品の手数料」参照)。運用商品の手数料は資産残高の増加につれて高くなるため、目先の手数料だけでなく、今後の資産の増加も考慮して運営管理機関を比較することが必要です。
(注)例えば運用手数料が年率で0.1%違うと、資産が10万円の場合は年間100円の差ですが、資産が100万円になると年間1,000円の差になります。
iDeCoの口座管理手数料
個人型DC(iDeCo)の運営管理機関に支払う手数料です。運営管理機関の多くは、記録を管理する業務を記録関連運営管理機関(RK:レコードキーパー)に委託しており、手数料は運営管理機関に支払った中からRKに支払われる仕組みが一般的のようです。運営管理機関に支払う手数料には月額0円から400円台位までばらつきがあり、RKに支払う手数料よりも安く設定している運営管理機関もあるようです。
他の確定拠出年金等への資産移換時の手数料
他の確定拠出年金の加入者となった場合等に、その制度に資産を移換するために運営管理機関に支払う手数料です。0円か4,400円かのいずれかが多いようです。
iDeCoの給付時の手数料(振込の都度)
個人型DC(iDeCo)の資産を管理している信託銀行に支払う手数料で、振り込みの都度440円支払う契約が多いようです。
企業型DCの運営管理手数料の負担者
確定拠出年金(企業型DC)の運営管理機関に支払う運営管理手数料を労使いずれが負担するかは労使で協議して決定します。一般的な傾向としては、加入者の手数料は会社が負担しますが、運用指図者の手数料については労使いずれが負担するケースもあります。移行元制度における会社負担状況を引き継ぐ場合は、次のような負担方法が考えられます。また給与の減額により会社負担の社会保険料等が軽減されている場合も会社に負担を求めやすいでしょう。
・適年・DB・厚年基金 … 加入中・退職後とも会社負担(※)
※ 退職金から移行した制度の場合、退職金と同様の負担とすることも考えられます。
企業型DCの運営管理手数料の水準
運営管理機関の多くは、記録を管理する業務を記録関連運営管理機関(RK:レコードキーパー)に委託しており、手数料は運営管理機関に支払った中からRKに支払われる仕組みが一般的のようです(残りが運用関連業務の手数料)。
運営管理手数料は安いほうが良いことはいうまでもありません。ただし手数料の水準に関わらず、選定提示される運用商品(注)やそれに係る情報提供等が加入者等の利益を損なうものであってはいけません。高品質のサービスが安定的に提供されると見込まれることが必要でしょう。
(注)2019年7月以降は全運営管理機関が提示商品の手数料一覧を公表するため、手数料が相対的に高い自社(同一金融グループ)の運用商品を提示している場合は、チェックしやすくなります。
運営管理機関が提供する付随サービス
運営管理機関は、運営管理業務以外のサービスを有償または無償で提供していることが一般的です(投資教育や法令改正に係る情報提供、規約や規程の作成支援、従業員説明資料の作成支援等)。このため運営管理手数料だけでなく、付随サービスの内容と価格も含め総合的に判断することが必要でしょう。
なお、投資教育は会社に実施義務(努力義務)がありますので、その費用は原則として会社が負担します。
連合会移換者(自動移換者)
企業型DC加入者が退職後も放置した場合の資産の移換
企業型DCの加入者が退職により加入者資格を喪失した後も放置した場合には次のようになります。
(1)退職時の年齢が60歳以上の場合
当該企業型DCの運用指図者となります。
(当該企業型DCに留まり給付を受給できます。)
(2)退職時の年齢が60歳未満の場合で放置した場合、6ヵ月+α(関係機関の手続き等に要する期間)後に資産(※1)が移換されます。
① 他の企業型DCの加入者となった場合
・・・当該他の企業型DCに資産が移換されます(※2)。
② 個人型DC(iDeCo)の加入者・運用指図者の場合(①は除く)
・・・当該個人型DC(iDeCo)に移換されます(※2)。
③ 上記いずれにも該当しない場合
・・・国民年金基金連合会に自動的に資産が移されます。
( 「連合会移換者(自動移換者)」(※3)となります。)
この間は原則として拠出も運用も行えません。
連合会移換者(自動移換者)の手数料
連合会移換者(自動移換者)となる時点
・特定RK(JIS&T※)手数料…3,300円
・国民年金基金連合会手数料…1,048円
※ 国民年金基金連合会は特定運営管理機関として日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社(JIS&T)に委託しています。
連合会移換者である期間中
・管理手数料…52円/月
連合会移換者でなくなる場合
・企業型DC・個人型DC(iDeCo)※・DBへの移換手数料(JIS&T)…1,100円
※ 個人型DCに移換する場合は国民年金基金連合会に2,829円の手数料が発生します。他の移換先制度での手数料有無は個別にご確認ください。
・脱退一時金・死亡一時金の裁定手数料…4,180円
連合会移換(自動移換)を回避するための説明義務
企業型DCの実施企業や運営管理機関は、当該企業型DCの加入者資格喪失者に連合会移換者(自動移換者)となると次のデメリットがある旨を説明することとされています。
・移換時及び移換後毎月手数料が資産から控除される(上記)
・連合会移換者(自動移換者)の期間は通算加入者等期間に算入されない
(当該期間が10年未満の場合、60歳で受給できない)
連合会移換(自動移換)の回避方法
連合会移換者(自動移換者)となることを回避する方法として、次の方法があります。
iDeCoの運用指図者(加入者)となる方法
連合会移換者(自動移換者)となる前でもなった後でも、申出により個人型DC(iDeCo)の運用指図者となることができます。DCに掛金を拠出すれば加入者となります。
脱退一時金を受給する方法
企業型DCの資産が1.5万円以下の場合や国民年金保険料の納付を免除されている場合には、脱退一時金を受給できる場合があります(「脱退一時金の受給要件」参照)。
連合会移換者(自動移換者)となる選択
確かに連合会移換者(自動移換者)となることには上記説明義務事項のようなデメリットがありますが、その是非は運用指図者となること等との相対比較で判断すべきでしょう。例えば資産が0になるケースや、運用指図者となっても「運用益-事務費」がマイナスとなり連合会移換者(自動移換者)になる場合とあまり差がないようであれば、あえて手間をかけないということも現実的な選択肢でしょう(本来はそのような理由による資産の消失がないよう脱退一時金要件を見直すべきでしょう)。