個人型DC(iDeCo)の拠出限度額・拠出事務(事業主払込・個人払込)・税

【記事公開後の更新情報】

令和3年9月1日に「確定拠出年金法施行令及び公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令の一部を改正する政令」が公布され(「公務員やDB加入者のiDeCo(イデコ)拠出限度額の2万円への引き上げ(令和6年12月施行)」参照)、令和6年(2024年)12月からDCの拠出限度額が見直されることとなりました。

令和2年3月3日に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」が国会に提出され同年5月29日に成立し6月5日に公布されました「令和2年確定拠出年金改正法案(年金制度改正法案)の国会提出」参照)。この法律ではiDeCoの加入資格や企業型DC同時加入に係る要件等が見直されています。
(改正は赤字で記載)

個人型DC(iDeCo)への拠出額

1カ月あたりの拠出限度額

個人型DC(iDeCo)の加入1カ月あたりの拠出限度額は次のとおりです。なお納付すべき国民年金保険料を納付しなかった月の掛金はiDeCoの加入者であっても拠出できません。

加入者の属性(国民年金・企業年金等の状況)拠出限度額/月
国民年金の第1号被保険者(自営業者等)6万8千円(※1)
民間被用者

企業型DCなし、他制度(※2)なし2万3千円
企業型DCなし、他制度(※2)あり1万2千円(※6)
企業型DC(個人型同時加入可)あり
他制度(※2)なし
2万円
(企業型3.5万円)(※4)
上記で個人型同時加入不可の場合)(※3)
(企業型5.5万円)
企業型DC(個人型同時加入可)あり
他制度(※2)あり
1万2千円
(企業型1.55万円)(※4)(※6)
(上記で個人型同時加入不可の場合)(※3)(企業型2.75万円)
公務員1万2千円(※6)
国民年金の第3号被保険者(専業主婦等)2万3千円
国民年金の任意加入被保険者
加入不可(※5)

※1:国民年金基金の掛金、国民年金の付加保険料との合計で6.8万円/月
「個人型DCへの拠出とDC以外への拠出との比較」参照)
※2:確定給付企業年金・厚生年金基金・私立学校教職員共済制度・石炭鉱業年金基金
※3:全ての企業型DCが原則(注)個人型同時加入可に【令和4年10月施行】
(注)拠出限度額の未使用枠の繰越により1月あたりの拠出限度額よりも多く拠出できる企業型DCの加入者は令和4年10月の法改正後もiDeCoには加入できません。
※4:事業主掛金の上限を政令で「5.5万円/2.75万円」としたうえで、iDeCoは「拠出限度額-事業主掛金」以下とすることが必要に【令和4年10月施行】
※5:加入可能に(拠出限度額は政令で規定)【令和4年5月施行】
※6:他制度掛金相当額に応じた額(上限2万円)となる予定【令和6年12月施行予定】   

(注)企業型DCの拠出限度額は「企業型DCの拠出限度額」参照。過去の拠出限度額や根拠については「確定拠出年金の拠出限度額の推移と根拠」参照。

iDeCoの拠出額の下限と単位  

個人型DC(iDeCo)への拠出額は「5千円×対象加入月数」を下限とし、千円単位で決定します。

iDeCoの掛金の変則的な払い方

個人型DCの掛金は月払以外に年払や半年払もできます。年払の場合は12月納付、半年払の場合は6月・12月納付となります。後払となるため運用期間は短くなりますが、拠出回数に応じて国民年金基金連合会に支払う手数料は少なくて済みます。
また月払で各月の額を異なる額とすることもできます。毎月の拠出限度額の未使用枠は12月納付分まで繰り越すことができますので、普段の月の拠出を抑えて、6月と12月は繰り越した拠出限度額の分も拠出するようなこともできます。
変則的な払方をする場合は、ルールがわかりにくいので、事前に運営管理機関に確認しましょう。

iDeCoに拠出する掛金額の変更

個人型DC(iDeCo)に拠出する掛金額の変更は原則として1年(納付月サイクルでは1月~12月、加入月ではその1カ月前)に1度だけ行えます。ただし、国民年金の被保険者区分が変更となった場合や、拠出限度額の区分が変更となった場合は、カウント外で変更できます。拠出額の変更申込では書類の授受を行うことが一般的なようですので、日程にご注意ください。

iDeCoにおける掛金の納付方法

確定拠出年金において個人型DC(iDeCo:イデコ)掛金の払込方法には「個人払込」「事業主払込」があります。

個人払込…給与天引をせず本人の口座から振替
事業主払込…加入者掛金を給与天引のうえ会社の口座から振替

個人払込

自営業者や専業主婦等は個人払込しか選べません。
会社員(厚生年金保険の被保険者)の場合、本人が希望すれば個人払込ができます。
また給与天引きが実務上できない企業の場合、本人の希望に関わらず個人払込となります。ただし本人が「事業主払込」を希望しているにも関わらず「個人払込」とするためには正当な理由が必要とされている(確定拠出年金法70条3項)ため、その場合は「会社の体制が整っていない」等の理由も事業主の証明書に記載します。
加入者毎に払込方法が混在する場合には、払込方法毎に登録事業所番号が付与されます。

個人払込の場合、残高不足等により納付期限までに拠出できなかった場合、納付期限後に(例えば翌月分に加算して)拠出することはできません。

事業主払込  

個人型DC(iDeCo:イデコ)の加入者掛金を「事業主払込」とする場合、国民年金基金連合会から会社に前月の引落結果明細と当月の引落予定明細が毎月連絡され、それに基づき引落がなされます。会社は当該引落予定明細を元に給与天引きを行うことが考えられますが、当該明細の到着時期と給与天引きの時期等によっては、加入者から引き落とし額の変更申し出を受ける仕組み等もご検討ください。

iDeCoへの加入者掛金拠出時の税制  

個人型DC(iDeCo)では加入者が拠出した掛金の全額が所得控除小規模企業共済等掛金控除)となり、所得税・住民税が軽減されます(「個人型DCやマッチング拠出における節税額の試算」参照)。
課税所得がない方には、所得税・住民税の軽減メリットはありません。
(注)小規模企業共済等掛金控除は社会保険料控除とは異なり、配偶者の所得から控除することはできません。

所得控除の手続き

「マッチング拠出とiDeCoの源泉徴収と年末調整」参照)

企業の手続き

iDeCo加入時や入社時の企業による確認事務

従業員が確定拠出年金のうち個人型DC(iDeCo:イデコ)に加入する時(又は入社前に個人型DCに加入していた者が入社後も継続して個人型DC加入者となる場合)は、当該従業員から事業主の証明書(加入可否・拠出限度額・払込方法(上記)の記載を依頼されます。なお、当該企業の従業員が当該事業所で初めての加入者となる場合には、「登録事業所」の登録も必要です。

個人型DC(iDeCo)加入後(毎年)

当該企業の従業員で個人型DC(iDeCo:イデコ)の加入者として登録された者については、毎年6月から10月頃、「現況届」が記録関連運営管理機関から会社に送付されます。
会社は、①在職有無、②個人型DC加入可否、③個人型DCの拠出限度額、を判定するための情報(企業型DCやDBの加入有無等)を記載し記録関連運営管理機関に提出します。