DC・DBの中期政策における与党税制改正大綱・政府税制調査会答申と企業年金・個人年金部会報告等の比較

企業年金の制度改正の方向性

企業年金の制度改正の方向性(政府・与党等)

令和元年後半に政府・与党等から示された主な企業年金の改正方針は次のとおりです。

① 政府税制調査会答申「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制のあり方」(令和元年9月26日)
 「政府税制調査会答申「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制のあり方」」参照)
② 自由民主党・公明党「令和2年度税制改正大綱」(令和元年12月12日)
③ 閣議決定「令和2年度税制改正の大綱」(令和元年12月20日)
 (「令和2年度与党・政府税制改正大綱におけるDC・NISA改正案(閣議決定)」参照)
④ 「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理」(令和元年12月25日)
 (厚生労働省サイト「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理」

示された方向性の比較

各団体から示された方向性は令和2年度改正は近いものの、中期的な方向性には厚生労働省と政府税制調査会・与党には違いがあります。

  政府 与党 政府 厚生労働省
税制調査会
(答申)
税制改正
大綱
税制改正の大綱
(閣議決定)
企業年金・
個人年金部会
令和2年度改正 近い内容
中期課題 近い内容 距離がある

 

中期的な方向性の比較

  政府税制調査会・
与党税制改正大綱
企業年金・個人年金部会
(厚生労働省)
公平で中立的 安倍首相から税制調査会に対して、『公平・中立・簡素』の三原則の下、あるべき税制のあり方について審議を求めるという諮問がなされた。 
(税制調査会)
公平性・中立性の確保は重要だが、制度の簡素さ・分かりやすさや、システムへの負荷も十分考慮して検討を進めるべきであることはいうまでもない。
制度共通の非課税拠出限度額
(穴埋め型)(※)
諸外国を見ると、例えばイギリスやカナダにおいては、加入している私的年金の 組み合わせにかかわらず同様の非課税拠出を行えるように、各種私的年金に共通の非課税拠出限度額が設けられている。こういった諸外国の例も参考に、我が国においても、働き方によって税制上の取扱いに大きな違いが生じないような姿を目指す必要がある。  

左記に賛同する意見があった一方で次の意見等があった
・ 企業年金が退職給付由来であり労使合意に基づく制度であるということを十分に留意する必要があるといった意見
・ 特にDBを実施している企業においては大きな制約になるものであり、各企業の制度に与える影響は大きく、企業年金の普及・拡大の観点から、慎重かつ丁寧な議論が必要であるといった意見
・ 具体的な制度設計によっては老後所得確保の流れに逆行するといった意見
・ 老後生活における自助・共助・公助の役割分担に関連するといった意見
公的年金等控除 諸外国を見ると、日本の公的年金等控除のような、年金収入に対する大きな控除はなく、基本的に拠出段階、給付段階のいずれかで課税される仕組みとなっている。
我が国においてもこういった例を参考に、世代内・世代間の公正性を確保する観点から検討を進めていく
日本はこれ以外に税制優遇のない退職一時金制度があります。(第9回議事録)
一時金課税と年金の課税の中立性 給付が一時金払いか年金払いかによって税制上の取扱いが異なり、給付のあり方に対して中立ではないという課題がある。 確定給付企業年金・確定拠出年金ともに、相当数が一時金受給を選択している。特に確定拠出年金では、企業型・個人型ともに9割程度と、この傾向が顕著である。
 これは、我が国では退職一時金制度が先行して普及・慣行化した経緯があること、受給者にとっても退職時に多額の一時金を必要とするニーズがあること、年金と一時金に対する社会保障制度 や税制の違いがあること、確定拠出年金は個人の資産額が少額のケースが多いこと等、様々な要因があると指摘されている。
(第8回部会資料)
退職所得の勤続20年格差 一時金払いの場合、勤続期間が 20 年を超えると一年あたりの控除額が増加する仕組みとなっており、転職の増加などの増加に対して対応していないといった指摘もある。
中途引き出し 勤労者財産形成年金貯蓄やNISAなど様々な制度が並立する中、引出し制限の有無や少額からの積立を促す仕組みの有無など、制度間での差異が存在している。今後は、一人ひとりのライフプランに応じた積立・分散投資など、退職後の生活への計画的な準備を適切に支援していく観点から、関連する税制を整理していく必要がある。
(税制調査会)
企業年金が退職給付由来であり労使合意に基づくものであるということや、これらの見直しの内容によっては、企業年金、特に確定給付企業年金(DB)の普及を阻害しかねないことにも留意して、自助・共助・公助の役割分担や雇用・働き方の変化等を踏まえつつ、将来像の検討とともに、税制との関係も含めて、引き続き丁寧に検討を継続していく必要がある。
 

 「穴埋め型(全国民共通の非課税貯蓄枠)の引退後所得保障制度」参照

制度の体系について

政府税制調査会の答申では「利用者の視点に立って、簡素で分かりやすい制度にすることが重要」とあります。制度の分類が審査基準や税制上の取扱いをわかりやすく説明できるものとなっているかどうかも中期政策として重要でしょう「退職給付制度・企業年金・個人年金等の区分と課題」参照)