企業型DC・iDeCoにおける運用商品の選択傾向(2019年3月)の分析

※ 下記調査結果は「令和元年度の確定拠出年金(企業型DC)の運用利回り(概算)」にも活用しています。

運営管理機関連絡協議会 「確定拠出年金統計資料(2002年3月末~2019年3月末)」の公表

令和元年11月に運営管理機関連絡協議会は「確定拠出年金統計資料 (2002年3月末~2019年3月末 )」をとりまとめ、関係協会や関係省庁に提供しました企業年金連合会サイト「確定拠出年金統計資料(運営管理機関連絡協議会提供)」参照)
この資料には2019年3月の、企業型DCの規約数・事業所数、企業型DC及び個人型DC(iDeCo)の加入者数・資産額・掛金額・給付額・運用商品選択状況等が集計されています。国内の記録関連運営管理機関(RK)4社が協力しているため、国内の全制度の集計といえます。

統計資料の分析における留意事項

DCにおける運用商品選択の意思と実績の乖離

DCにおける運用商品選定プロセス

DCにおいては運用商品の選定は次の3つのプロセスで行われます。

Step1.運営管理機関の決定
Step2.運営管理機関による指図可能な商品の提示
Step3.提示された商品から自身が運用する商品を選択

個人の運用商品選択の意思の反映

企業型DCの場合、一般の従業員はStep1、Step2にはほとんど関与できないことも多いものと思われます。このため本人の希望する商品がこの段階で除かれていた場合には本人の意思と実績に乖離が生じます。

個人型DC(iDeCo)の場合、Step2には個人は関与できませんが、Step2でどうなるかを知ったうえでStep1の選択ができますから、企業型DCと比べると本人の意思と実績の乖離は抑えやすくなります。ただし、手数料の安さを重視する場合や取引のある金融機関を選ぶ場合等、Step1で商品以外の要素が重視されている場合も予想されます。

統計に係る考察における留意事項

自ら運用指図を行わなかったため各制度で定めたデフォルト商品を選択したとみなされた資産額と自ら選択した資産額とは区分されていません。またターゲットイヤーファンドは区分されていません(バランス型に含まれているものと思われます)。
今回は統計資料のうち2019年3月末の数値について記載しています。運営管理機関や提示運用商品の選定に至る実務や個人に対する運用商品選択に係る説明実務については把握できていないため考慮していません。

運用商品の選択状況

企業型DCとiDeCoの商品選択傾向の違い

(出所)運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料 (2002年3月末~2019年3月末 )」を元にDCセカンドオピニオン作成(以下のグラフも同様)


元本確保型商品と投資信託の選択割合

企業型DCでは元本確保型商品の選択割合が50%を超えています。平成30年5月の法改正前はほとんどの企業がデフォルト商品を元本確保型商品としていたため、運用指図を行わなかった従業員の影響が含まれています。

一方個人型DC(iDeCo)では自ら加入を申し出ているため、企業型DCよりもデフォルト商品が適用される割合は少ないものと予想されますが、企業型DCよりも元本確保型商品の選択割合が高くなっています。もしかすると例えば次のような理由が影響しているのかもしれません。(なお、退職により企業型DCから資産を移換した加入者や運用指図者は、企業型DCと近い運用傾向にあるのではないでしょうか。)

① 企業型DCの方が投資教育が充実していると思われること。

② 企業型DC(退職金等から移行)では想定利回り(平均約2%)で運用しないと損をするという危機感を感じやすいと思われる一方、個人型DC(給与等から拠出)では税制優遇があるため運用益がなくても得をするという安心感を持ちやすいと思われること。

バランス型の投資信託の割合

企業型DCの方がバランス型の投資信託の選択割合が高くなっています。これも分散投資についての投資教育が影響しているのかもしれません。
一方、個人型DC(iDeCo)については、税制優遇分を守りたい保守的なタイプがいる一方で、自らの意思を反映したい積極タイプも多いと思われます。後者のタイプはバランス型よりも個別の投資信託を組み合わせることを好むのかもしれません。

商品選択傾向の違い(男女別)

企業型DC、個人型DC(iDeCo)とも女性の方が元本確保型商品の選択割合が高くなっています。以前新聞で「女性の方がリスク回避傾向が強い」という記事を見たことがありますが、この結果もそう思わせる内容です(ただし男女の年齢構成の比較等は行えていません)。

商品選択傾向の違い(年代別)

(注)60歳以上受給方法の選択肢としての保険商品の選択状況が影響を与えると推測されることからグラフから除きました(他の年代よりも保険の選択割合が高くなっています)。対象者が少ない20歳未満も除いています。

元本確保型商品と投資信託の選択傾向(年代別)

投資理論上、一般に年齢が高くなるほどリスクを抑えた運用をすべきといわれています。

個人型DC(iDeCo)の運用傾向はそうなっていますが、企業型DCでは若年者の元本確保型商品の割合も高くなっています。英国のNESTでは若年者の心理(リスク回避傾向が強い)に配慮し、デフォルト運用においてはあえて若年時のリスクを抑える運用をしています厚生労働省サイト「第13回社会保障審議会企業年金部会 資料1」参照)が、企業型DCの上記結果も若年者のリスク回避の心理が反映されたものかもしれません。個人型DC(iDeCo)ではリスク回避傾向が強い人は加入に消極的になるためその傾向がみられなかったのかもしれません。また企業型DCでは若年者ほどデフォルト商品が適用される従業員が多かったのかもしれません。

元本確保型商品における満期年数の選択傾向(年代別)

元本確保型商品の場合、長期保有する場合は満期が長い商品が、一時的な保有なら満期が短い商品が利回りが高いと言われています。このため、保守的な運用をする意思が固まった高年齢層ほど満期の長い元本確保型商品を選択しているものと思われます。また中途解約しない場合は預金よりも保険の方が利回りが高いと言われていますが、先ほどのグラフではやはり高年齢層ほど保険の割合が高くなっています。

(注)3年満期の預貯金の選択割合が企業型と個人型で大きく異なる理由は不明ですが、もしかすると提示(Step2)の段階で差が生じているのかもしれません。そうであれば、企業型DCと個人型DC(iDeCo)で運営管理機関の勢力図が異なることや勤務先企業の関与が影響しているのでしょうか。

投資信託のパッシブとアクティブの割合

DCやつみたてNISAに関する公的な検討会ではアクティブ商品は必ずしも好意的に評価されてはいないという印象を受けます(※)が、実際の選択状況で見る限り、企業型DCでは国内株式で、個人型DC(iDeCo)では国内株式とバランス型でパッシブとアクティブとの選択割合が拮抗しています。運営管理機関による提示傾向も影響しているのかもしれません。
なお、最初に個人型DC(iDeCo)ではバランス型の選択割合が企業型よりも低いと記載しましたが、パッシブのバランス型の選択割合は更に少ないことになります。個人型DC(iDeCo)の加入者は自ら運営管理機関を選べるために自身が運用したい商品で運用しやすいということもあるでしょうし、個人型DC(iDeCo)の加入者は自身の意思を積極的に反映させたい傾向にあるのかもしれません。

※ 例えば金融庁サイト『「「長期・積立・分散投資に資する投資信託に関するワーキング・グループ」報告書』厚生労働省サイト「社会保障審議会(確定拠出年金の運用に関する専門委員会)」の議事録等参照。

今回取りまとめられた統計資料は、我が国におけるDC加入者等の投資行動を把握分析し、今後の投資教育等のあり方を検討するうえで有益な資料といえ、関係者にはこれを有効に活用することが期待されます。