令和2年度税制改正要望(厚生労働省・金融庁等の確定拠出年金・NISA・生命保険に係る要望)

【記事公開後の動向】

特別法人税の凍結期限を3年間延長する法案は令和2年3月27日に成立し3月31日に公布されました「特別法人税の凍結期限の令和5年3月末までの3年延長(租税特別措置法の改正)」参照)。NISAやつみたてNISAの期間延長等の法案も令和2年3月27日に成立し3月31日に公布されました「令和2年度NISA改正に係る租税特別措置法の改正」参照)

 令和2年3月3日に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」が国会に提出され同年5月29日に成立し6月5日に公布されました「令和2年確定拠出年金改正法案(年金制度改正法案)の国会提出」参照)。この法律ではiDeCoや企業型DCの年齢到達による加入者資格喪失規定が撤廃されています(それぞれ国民年金・厚生年金の被保険者であれば加入可能に)。またiDeCoプラスの人数要件を300人に緩和する改正が含まれる等、「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理」の内容が基本的に反映されています。

 厚生労働省が要望していたDC制度改正(社会保障審議会の議論の反映)については令和元年12月25日に「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理」が公表されました厚生労働省サイト「「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理」参照)

令和元年12月12日に与党(自由民主党・公明党)は「令和2年度税制改正大綱」を公表し、12月20日に政府は閣議決定しました。この大綱には特別法人税の凍結期限の延長やDC制度改正案が含まれています。(「令和2年度与党・政府税制改正大綱におけるDC・NISA改正案」参照)

 

税制改正の流れ

令和元年8月30日に厚生労働省厚生労働省サイト「令和2年度厚生労働省税制改正要望について」参照)・金融庁金融庁サイト「金融庁の令和2年度税制改正要望について」参照)等の税制改正要望が公表されました。今回は確定拠出年金(DC)・NISA・生命保険等に係る改正が要望されています。ただしDCに係る厚生労働省の具体的な要望内容は、今後の社会保障審議会での議論を経て決定されます。
(注)各府省庁の要望内容は各府省庁のサイトに掲載される他、財務省サイト「毎年度の税制改正」にも掲載されています。

府省庁の要望は財務省や与党等による検討を経て、12月頃には与党税制改正大綱が、それを受けて政府税制改正大綱が決定され、法案が令和2年の通常国会で審議されることとなります。

確定拠出年金関連改正要望

特別法人税の撤廃(または凍結延長)要望

要望内容

企業年金等(※)の積立金に対し1.173%の税率(地方税を含む)で課税される特別法人税は、金融市場の状況、企業年金の財政状況等に鑑み、 平成11年度より課税を凍結されていましたが、令和2年3月末に凍結期限を迎えることから、厚生労働省を含む6~7省庁が撤廃または凍結の延長を要望しているようです。

※ 確定拠出年金、確定給付企業年金(従業員拠出分を除く)、勤労者財産形成給付金等。

昨年の与党税制改正大綱との関係

現在の特別法人税は必ずしも合理的とはいえないと思われます「特別法人税率の根拠と問題点」参照)。しかし昨年12月に自由民主党・公明党が公表した「平成31年度税制改正大綱」では「拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する」とあることから、退職所得控除の見直し方針等(関連動向は「確定拠出年金関係団体の令和2年度税制改正要望等」参照)が定まるまでは単純撤廃ではなく凍結延長となるかもしれません。

社会保障審議会での議論に関する要望

厚生労働省の要望内容

厚生労働省は「企業年金・個人年金制度等については、現在、社会保障審議会において議論を行っており、その結果等を踏まえて税制上の所要の措置を講ずる」ことを要望しています(具体的な要望内容は記載されませんでした)。

要望を検討していると思われる内容

これまでの閣議決定事項や新聞報道から、例えば次のような改正要望を検討しているものと思われます。

項目 検討内容や関連情報
60歳~65歳の加入
(iDeCo)
公的年金の被保険者(国民年金の任意加入者を含む)であれば加入を認める「平成30年規制改革実施計画における確定拠出年金関連計画(閣議決定)」参照)。
60歳以上の加入
(同一企業要件)
(65歳以上の加入)
(企業型DC)
60歳以降「同一企業で継続勤務」だけでなく、「同一の企業グループ内で転籍」の場合も加入を認める「平成30年規制改革実施計画における確定拠出年金関連計画(閣議決定)」参照)。または骨太方針における高齢期の就労支援に合わせて65歳以降や一般の再就職にも拡大。
DCの受給開始を75歳とする選択も可能に 公的年金では現在同様の措置が検討されています「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針2019)や成長戦略実行計画等の閣議決定」「2019年財政検証結果の公表(社会保障審議会年金部会)」参照)
企業型DC加入者のiDeCo加入と拠出限度額 原則として希望者全員に加入を認め、事業主掛金を5.5万円(2.75万円)まで拠出することを認める案が報道されています。
中小事業主掛金納付制度(iDeCoプラス)実施企業の人数要件 100名から300名に引き上げる案が報道されています。
ポータビリティ 企業型DCから企業年金連合会への移換、確定給付企業年金の残余財産のiDeCoへの移換。
脱退一時金要件 海外に帰国し公的年金の被保険者でなくなった場合で資産が少額の場合等(公的年金では既に「外国人脱退一時金制度」がある)の受給。

(注1)iDeCoの加入手続のオンライン化等の手続の簡素化も検討することとされています(「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針2019)や成長戦略実行計画等の閣議決定」参照)が、税制とは直接関連しないと思われます。
(注2)厚生年金の適用範囲の拡大や国民年金の加入年齢の引き上げがなされた場合(「2019年財政検証結果の公表(社会保障審議会年金部会)」参照)、新たに公的年金の被保険者となる者も原則としてDCに加入できるようになります(後者はiDeCoの加入年齢が上記のとおり引き上げられている場合)。

NISA関連要望(金融庁)

金融庁サイト「金融庁の令和2年度税制改正要望について」参照)

NISAの恒久化・期限延長

NISAは現在2023年までの時限措置ですが「確定拠出年金(DC)とNISAや財形年金貯蓄との比較」参照)、これを恒久措置とすることが要望されています。特に「つみたてNISA」については、 開始時期にかかわらず20年間のつみたて期間が確保されるよう、制度期限(2037年)を速やかに延長することが要望されています。

つみたてNISA奨励金の非課税措置

企業が従業員に対して一定の要件を満たす規約に基づき支給する、つみたてNISA奨励金(現在は給与所得として課税)については、 毎月1,000円を限度として非課税とすることが要望されています(3年の時限措置)。

(注1)給与天引きによるNISA導入企業の約半数が奨励金を支給しているようです。
(注2)当該奨励金が社会保険料の計算の基礎にならないことの明確化も要望されています。

生命保険関連要望(金融庁)

現行制度

平成23年12月までの契約

生命保険料控除 所得税 5.0万円
住民税 3.5万円
個人年金保険料控除 所得税 5.0万円
住民税 3.5万円
所得控除限度額 所得税 10.0万円
住民税 7.0万円

 

平成24年1月以降の契約

一般生命保険料控除 所得税 4.0万円
住民税 2.8万円
介護医療保険料控除 所得税 4.0万円
住民税 2.8万円
個人年金保険料控除 所得税 4.0万円
住民税 2.8万円
所得控除限度額 所得税 12.0万円
住民税 7.0万円

 

要望内容

一般生命保険料控除 所得税 5.0万円
住民税 3.5万円
介護医療保険料控除 所得税 5.0万円
住民税 3.5万円
個人年金保険料控除 所得税 5.0万円
住民税 3.5万円
所得控除限度額 所得税 15.0万円
住民税 7.0万円